山脈形成メカニズムの解明に役立つ造山モデルを開発 台湾・中央研究院

台湾の中央研究院(Academia Sinica)は9月4日、同院の研究チームが台湾の山脈を形成した地殻変動について理解を深めるのに役立つ新たな造山モデルを開発したと発表した。この研究成果は、学術誌Science Advancesに掲載された。

山脈は地殻プレートの収束による大陸地殻の変形によって形成され、そのような造山運動が生じている地帯は造山帯と呼ばれる。欧州アルプスやピレネー山脈、ニュージーランドの南アルプス山脈など、多くの造山帯は「造山くさび変形(orogenic wedge deformation)」モデルによって理解することができる。しかし、従来のモデルでは、台湾に見られる複雑な地殻構造や変成温度、急速な浸食を正確に再現することが難しかった。

この課題に対処するため、地球科学研究所(Institute of Earth Science)のエー・タン(Eh Tan)博士率いる研究チームは、造山くさびの新しい熱機械的モデルを導入した。モデルには、台湾の複雑な造山帯を再現するために、東部の垂直のバックストップ、現実的な地熱勾配、岩相と勾配に左右される浸食、地質物質の脆性-延性遷移、デコルマン(ある地層が横圧力によってその下の地層から分離し、横方向に滑動してできる構造)の形状などが組み込まれている。

この新しい研究手法は、台湾の造山メカニズムを解明するだけでなく、世界各地の造山帯の研究にも役立つことが期待される。

左:台湾の変成岩の地図 右:台湾北部の地質図

上:北クロスアイランド・ハイウェイ沿いの地震波P波速度モデル(Van Avendonk et al, 2014)下:本研究による造山モデル
(出典:いずれもAcademia Sinica)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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