台湾の陽明交通大学(NYCU)は11月12日、生成AIを利用して医療イノベーションを推進するため、新光病院(Shin Kong Hospital)およびファイソンエレクトロニクス(PHISON Electronics)と提携したと発表した。
(出典:NYCU)
提携プロジェクトの第1段階では、肺ガンや骨盤内腫瘍の低線量CTスキャンへの適用を目標に、PET画像解析と症例報告の作成に取り組む。PET画像の解析は従来、医師が手作業で行っており、リンパ節異常の境界の曖昧さが課題となることが多かった。NYCUの研究チームは、新光病院の患者画像を使ってAIに学習させ、骨盤領域のリンパ節病変を正確に識別するシステムを開発した。この技術とファイソンの生成AIを組み合わせることで、PETやLDCTスキャンに適用できる包括的な症例レポートの作成を可能にする。来年10月には、台湾の衛生福利部の医療機器承認を受ける見込みであり、新光病院での臨床導入への道を開く。
一方、臨床での生成AIの利用について、新光病院のユージン・ウー(Eugene Wu)会長は、データセキュリティをめぐる懸念を指摘した。患者データが民間保険会社の手に渡った場合、遺伝的懸念に基づいて保険が拒否される可能性があり、患者に悪影響を及ぼしかねない。「ヘルスケアAIにおけるデータ管理は、金融よりもいっそう厳格でなければならない」とウー氏は強調した。
NYCUのチーホン・リン(Chi-Hung Lin)学長は、多くの産業における生成AIの変革的なポテンシャルを強調し、今回の提携が研究、教育、患者ケアをさらに前進させることに期待を表明した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部