米国のシンクタンク「カーネギー国際平和基金(Carnegie Endowment for International Peace)」は、トランプ氏の政権復帰を前に、国際的な気候変動政策の見直しの必要性を指摘する記事を公開した。
記事ではまず、バイデン政権が押し進めた気候政策の成果を振り返った。ジョン・ケリー気候問題担当特使の下、米国は多国間の取り組みを先導した。しかし、2023年には石炭消費量が過去最高を記録するなど各国の公約の進捗ははかばかしくない。これは、従来の多国間協調の限界を物語っている。
現在の国際情勢の大きな変化も、気候変動政策の見直しを迫る要因となっている。記事は特に4つの変化を指摘している。米中対立に代表される地政学的な複雑化、企業や金融機関など非政府主体の影響力と役割の増大、米国内の政治的制約、そして米国のインフレ削減法やEUの炭素国境調整メカニズムなどの産業政策の台頭である。
こうした状況に対応するため、記事は新たな政策アプローチを提示している。具体的には、国内補助金による技術革新の促進、排出基準の緩い国に対する炭素関税の導入、新興国・途上国への技術・資金援助を組み合わせた戦略である。
記事では最後に、気候変動対策と貿易が密接に関連する領域において各国の政策をすりあわせ、補助金、関税、投資政策に関する基本ルールを確立する「炭素クラブ(carbon club)」の設立を提言している。そして、商業外交と貿易を積極的に活用し、戦略的なインセンティブとペナルティを利用することで、米国はより効果的な気候政策に向け世界をリードすることができると結論付けている。
(2024年11月27日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部