AIチップのサプライチェーン安全保障をめぐる課題と提言 新アメリカ安全保障センター

米国の新アメリカ安全保障センター(Center for a New American Security:CNAS)は、人工知能(AI)チップのサプライチェーンの安全保障をめぐる課題を分析し、米国の経済競争力、国家安全保障、民主主義的価値のバランスを取るために革新的なハードウェア対応メカニズム(hardware-enabled mechanism:HEM)を提案するレポートを発表した。

「AIチップのサプライチェーンを確保するためのテクノロジー:ワーキングペーパー(Technology to Secure the AI Chip Supply Chain: A Working Paper)」と題されたレポートは、既存のAIチップ輸出規制は執行が難しく、輸出業者やエンドユーザーに過度の負担を強いる危険があることを強調している。これらの規制はまた、ペーパーカンパニー経由の回避行為を効果的に取り締まることが難しく、執行面で重大な欠陥が生じている。

こうした課題に対処するための的を絞った解決策として、報告書では、データセンターのAIハードウェアに組み込まれたセキュリティメカニズムであるHEMの活用を提案している。こうしたメカニズムは、アップル(Apple)の「Secure Enclave」やグーグル(Google)のチップ検証システムなど、市販の製品や防衛向け製品ですでに広く利用されている。

HEMの開発と導入を促進するため、報告書は米国の政策立案者に以下を提言している。

  • 直接的な資金提供や官民パートナーシップを通じ、HEMとハードウェアセキュリティの研究開発を加速させる。
  • 条件付き輸出ライセンスを通じ、HEMの研究開発に商業的インセンティブを与える。
  • AIハードウェアセキュリティ標準の策定を進め、業界全体でのセキュリティ機能の導入と調和を促進する。

また、報告書は、イノベーションを阻害したり過度な監視負担を課したりすることなく、AIチップのサプライチェーンを保護するための革新的なアプローチの必要性を強調し、政策立案者がこれらの課題に対処するためのロードマップを提示している。

(2024年12月11日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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