台湾の陽明交通大学(NYCU)は1月22日、法律実務への生成人工知能(AI)の統合を主眼に開講されている法学部のコースを紹介し、生成AIの活用とそのリスクについて指摘する記事を公開した。
(出典:NYCU)
2023年9月に開講された「AIを活用したリーガルライティング:テクニック、戦略、ツール」は当初、AIを使って法律文書を起草する方法を学生に教えることを目的としていた。ChatGPTの進化に伴い、カリキュラムは、AIに適切な指示を与えて望む結果を得るためのプロンプトエンジニアリングに重点を置くようになり、法的要件に合致したAIのアウトプットを得るためのインプットの設計と最適化を指導するようになった。
しかし、生成AIには、一見もっともらしいが事実とは異なるコンテンツを生成する「ハルシネーション」などのリスクが伴う。コースを主導するマーク・L・ショープ(Mark L. Shope)准教授は、特にリーガルリサーチや公式文書の作成においては、AIが生成した情報を常に批判的に捉える必要があると強調する。
生成AIの活用においては、用途によってリスクの程度が異なる。文法修正や文書構成の調整といった一部の作業は比較的リスクが低いが、リーガルリサーチと法律分析では、法律の急速な変化やAIデータベースに収録されているデータの陳腐化などにより、リスクが高まる。こうしたリスクを軽減するために、ショープ准教授は学生に、法律データベースの使用に習熟し、引用元を確認する習慣を身につけるように指導している。
記事は最後に、AIによって業務効率は向上するものの、真の価値は専門的知識と健全な判断力の融合にあると結んでいる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部