高効率で省エネなAI実現につながるブレークスルーを達成 台湾・陽明交通大学

台湾の陽明交通大学(NYCU)は2月11日、同大学の国際半導体産業学院(International College of Semiconductor Technology)の研究チームが、人間の脳の学習・適応能力を模倣するニューロモーフィック・コンピューティングの分野において、高効率かつエネルギー消費の少ない人工知能(AI)の実現につながる重要な技術的ブレークスルーを達成したと発表した。この研究成果は、学術誌Nano Lettersに掲載された。

NYCUとインド工科大学の両方でデュアル博士号取得を目指しているデュレゲシュ・クマール・オジャ(Durgesh Kumar Ojha)氏率いる研究チームは、スピントロニクス技術を利用して、タングステン/白金/コバルト/酸化ニッケル/白金(W/Pt/Co/NiO/Pt)からなるヘテロ構造デバイスによる「無磁場フリー・スイッチング(field-free switching:FFS)」と呼ばれる設計に取り組んでいる。この設計は、外部から磁界を印加することなく磁気スイッチングを実現することで、エネルギー消費量を劇的に減少させ、効率性を高めることが可能となる。

この基盤に基づいて、研究チームは、エネルギー消費量の少ない人工シナプスとニューロンを開発し、3層の人工ニューラルネットワークに応用した。開発したニューラルネットワークは、MNISTデータセットとFashion MNISTデータセットを使った実験で高い精度を示し、人間の脳のような動作モデルを実証した。

この研究成果は、自律走行やインテリジェント監視、医療画像診断などのAIアプリケーションにおける高速処理に新たな扉を開くことが期待される。

MNISTとFashion MNISTに対するニューロモーフィックコンピューティングアプローチにおける右巻きスピン軌道トルク磁気メモリを示す図
(出典:NYCU)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る