アジア太平洋経済協力(APEC)は2月26日、オーストラリアのブリスベンで23~25日に行われたAPECビジネス諮問委員会(ABAC)にて、保護主義の台頭、規制の複雑化、気候変動、高齢化、加盟国の経済成長率の鈍化などの課題に対処するため、APEC加盟国が自由で開かれた貿易と協力の推進に向けて統一行動を取るよう求めた。
ABACのメンバーは、世界的な不確実性が貿易の流れや投資意思決定に悪影響を及ぼしていることに警戒感を示し、政府とビジネスが連携して対応する必要性を強調した。特に、人工知能(AI)や量子コンピューティングなどの新興技術が経済に及ぼす影響について、警戒しながら活用すべきだと指摘した。
ABACは、ペーパーレス貿易、貿易円滑化、強靭なサプライチェーンの確立など、ABAC2025が目指す実用的な解決策を推進するとし、自由貿易の強化のため、世界貿易機関(WTO)とアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の発展が不可欠であると述べた。これらを活用することが、デジタルトランスフォーメーションと気候危機という課題を乗り越える上で重要であり、公正で互恵的な貿易につながるという考えを示した。
ABACはこの会合で2025年のテーマ「ブリッジ・ビジネス・その先へ」を採択し、政策立案者や関係者と連携し、経済成長と繁栄を実現するための役割を果たす方針を掲げている。具体的には、中小企業への人工知能(AI)などデジタルツール導入、スマート医療システムの構築、脱炭素などエネルギー転換への取り組みなどを進める。また、エネルギー安全保障やインフラ投資の格差などの課題にも取り組む姿勢を示した。特に、女性の経済的成功を阻む障壁を取り払うためにベンチャーキャピタルの利用推進や男女間の賃金格差の是正への取り組みを推奨した。
さらに、急速に進む高齢化社会への対応策として、革新的で包括的な医療制度の確立を目指し、持続可能な資金調達システムや先進的なヘルスケアモデルなどデジタルヘルスツールの統合や医療サービスの効率化を提言する方針を示した。加えて、電力需要の増加から、脱炭素化の推進には国際協力と低炭素投資の拡大が不可欠であり、具体的なロードマップの策定を急ぐ必要があるとした。ABACは、こうした提言を10月のAPEC首脳会議に向けてまとめるため、4月にトロントで再び会合を開く予定である。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部