大気汚染と高齢者の脳の健康の関係を明らかに 台湾・陽明交通大学

(出典:NYCU)

台湾の陽明交通大学(NYCU)は3月24日、大気汚染物質の低下が高齢者の注意力の改善や脳白質の構造的完全性の維持と正の相関を持つことを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Environment Internationalに掲載された。

研究は台湾国内の農村部および都市部に住む60歳以上の健康な高齢者412人を対象に行われた。対象者が過去10年間にさらされた微小粒子状物質(PM2.5)、二酸化窒素、オゾン、浮遊粒子状物質(PM10)の量を空間モデルで推定し、認知機能テストとMRIによる脳構造の変化を評価した。大気汚染曝露量の推定値は台湾の成功大学地理学科のチーダ・ウー(Chih-Da Wu)教授が提供したものだ。研究の結果、PM2.5と二酸化窒素の濃度の低下が、被験者の注意力向上や、記憶や注意に関与する脳の白質領域の構造完全性の向上と正の相関があることが確認された。

NYCUのイー・ファン・チュアン(Yi-Fang Chuang)准教授は、「この研究は空気の質の改善が高齢者の認知機能に有益である可能性を示すものです」とし、脳の老化に対して環境因子が与える影響の重要性を強調した。NYCUのウェンチー・パン(Wen-Chi Pan)准教授は本研究について「これまでの欧米諸国の研究は、大気汚染と心血管疾患や肺がんとの関連が中心でしたが、この研究は大気汚染が脳の健康に与える影響に注目した点が重要です」と説明する。

研究チームは、空気の質の改善は環境保護だけでなく、高齢化社会における公衆衛生の向上にも資するものであり、今後の政策立案において重要な視点となるべきだと提言している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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