子どもの運動発達に関する全国調査を実施 台湾

台湾の国家科学及技術委員会(NSTC)は4月2日、国立台湾師範大学の「台湾における子どもの発達と保育に関する全国縦断研究(KITプロジェクト)」の調査チームが、台湾の子どもの運動発達の実態と課題を明らかにし、保護者・教育者・政策立案者に向けた改善提案を発表したことを伝えた。

運動発達は、体力だけでなく、脳の発達、認知機能、社会適応、学業成績にも深く関わっており、子どもの健やかな心と体の成長に不可欠な要素である。本調査は、台湾の子ども(3歳から小学校低学年)を対象に、運動発達に関する影響要因を長期にわたって追跡したもので、年齢別傾向や性別差、運動習慣の実態を定量的に示している。

調査結果によれば、子どもたちの運動能力は年齢とともに着実に向上し、特に3~5歳の就学前期に成長が著しい。性別では、女子は微細運動能力(ボトルキャップをしっかり回すなど)に優れ、男子は粗大運動能力(両足で連続的に前方にジャンプするなど)で優位にあることが明らかとなった。

しかしながら、運動の習慣や強度に関しては課題が多く、台湾の小学校低学年児童の80%以上が世界保健機関(WHO)の推奨する1日1時間の運動基準を満たしていない。さらに、1年生の20%、2年生の23%が日常的な運動習慣を持たず、中等度以上の強度の運動(速歩、サッカーなど)を行う児童も約30%にとどまり、日本の63%と比較しても大きな差がある。

日常生活における家事参加も、運動能力の発達に好影響を与えることが示された。重労働の家事(モップがけ、ゴミ出し、洗濯物干しなど)は粗大運動能力を、軽労働の家事(テーブル拭き、服たたみ、食器洗いなど)は微細運動能力を高める傾向があるという。

加えて、運動能力を育むには多様な学習環境が欠かせないと指摘された。市場への外出や公園での遊び、自転車、球技といった粗大運動活動に加え、パズルや積み木、粘土遊びなどの微細運動活動も、子どもの運動スキルを長期的に育む。これらの活動への継続的な参加が、発達の促進に寄与するとされる。

研究チームは、以下の改善策を提案している。

  • (1) 保護者向け:早期の運動習慣形成、家事参加の奨励、多様な学習環境の提供
  • (2) 学校向け:運動機会の拡充、魅力ある体育授業の実施、休み時間や放課後の運動促進
  • (3) 政府機関向け:子どもの運動発達の重要性に関する社会的認知の向上

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る