アルツハイマー病の新たな治療標的遺伝子を発見 台湾・陽明交通大学

台湾の陽明交通大学(NYCU)は5月12日、台湾の国立衛生研究院(NHRI)と共同で、免疫遺伝子CLEC5Aがアルツハイマー病の進行に関与し、新たな治療標的となる可能性を示したと発表した。研究成果は学術誌Journal of Neuroinflammationに掲載された。

研究チーム:NHRI免疫学研究センターのシーリャン・シェイ(Shie-Liang Hsieh)所長(右)、NYCU脳科学研究所のハンジュオ・チェン(Han-Juo Cheng)准教授(中)
(出典:NYCU)

CLEC5Aはこれまでデング熱やインフルエンザなどウイルス感染症に対する防御遺伝子とされてきたが、今回の研究では、アルツハイマー病においても重要な役割を果たしていることが明らかとなった。NYCU脳科学研究所のハンジュオ・チェン(Han-Juo Cheng)准教授と、NHRI免疫学研究センターのシーリャン・シェイ(Shie-Liang Hsieh)所長が主導した。

研究チームは、CLEC5A遺伝子を欠くアルツハイマー病モデルマウスを作製し、通常のモデルマウスと比較した。CLEC5Aを欠いたマウスは、記憶力と学習能力のテストで顕著な改善を示し、脳内のβアミロイドプラークの蓄積も大幅に抑制されていた。チェン准教授は、「CLEC5Aを除去すると、免疫細胞ミクログリアの炎症が抑えられ、さらにβアミロイド除去能力が向上した結果、神経変性が遅延しました」と説明している。

この発見は、CLEC5Aを標的とした薬剤開発が、記憶障害を伴うアルツハイマー病の治療に新たな道を開く可能性を示すものである。シェイ所長は、「当初は直感的な着想に過ぎませんでした」と語り、かつて同遺伝子が重症デング熱や日本脳炎の原因遺伝子であることを突き止めた経緯に触れた。さらに、CLEC5Aが狼瘡などの自己免疫疾患にも関与することがわかり、脳内で誤って神経細胞を攻撃している可能性に着目したことが今回の成果に結びついたと振り返った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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