セサミンに膀胱がん転移抑制と化学療法効果を高める可能性 台湾・陽明交通大学

台湾の陽明交通大学(NYCU)は5月28日、新光記念病院(SKH)と共同で、ごま油由来の天然化合物セサミンが膀胱がんの転移を抑制し、化学療法の効果を高める可能性を示したと発表した。研究成果は学術誌International Journal of Biological Sciencesに掲載された。

(出典:NYCU)

セサミンはゴマに含まれるリグナン系化合物で、従来は心血管保護や体重管理効果で知られてきた。今回の研究では、膀胱がん細胞に対し、セサミンが細胞外マトリックスを分解する酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼMMP2の発現を抑え、がん細胞の浸潤性や転移能を低下させることが分かった。

SKH泌尿器科主治医であり、NYCU伝統医学研究所の博士課程に在籍するチャオ・イェン・ホー(Chao-Yen Ho)博士は「セサミンはLincRNA-p21という長鎖ノンコーディングRNAの発現を抑制し、STAT3を介した細胞内シグナルを断つことで、がんの進行に関与する酵素の活性を抑えることが分かりました。これは天然物による安全な治療選択肢となる可能性があります」と説明する。

さらに、セサミンは抗がん剤に対するがん細胞の感受性を高め、治療効果の向上と薬剤使用量の削減を可能にするとして、副作用の軽減にもつながると期待されている。

本研究を主導したSKH外科部長のイー・シェン・ファン(I-Sheng Hwang)教授は「セサミンのような天然物は、統合がん医療において有望な補助療法となる可能性があります」と述べた。また、SKHトランスレーショナルメディシンセンターのアン・チェン・チャン(An-Chen Chang)氏は「セサミンは高い安全性と生体適合性を示しており、膀胱がんに対する抗転移効果が科学的に示されたのは初めてです」と語った。

ゴマは歴史的に腎臓の栄養と消化器系の健康のために重宝されてきた。NYCU伝統医学研究所のトゥン・イー・リン(Tung-Yi Lin)教授は「本研究は、分子生物学の手法によりセサミンの抗腫瘍メカニズムを実証し、伝統医学と現代科学の橋渡しを果たすものです」と述べている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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