量子技術研究開発を促進する2つの研究施設を公開 台湾・中央研究院

台湾の中央研究院(Academia Sinica)は6月10日、量子コンピューティングチップの製造における重大な科学的進展を発表すると共に、量子技術研究開発を促進する2つの研究施設を公開した。

中央研究院のジェームズ・リャオ(James C. Liao)院長によるオープニングイベント

中央研究院の研究チームは、工業技術研究院(ITRI)の電子・光電子研究所(Electronics and Optoelectronics Research Laboratories)と台湾半導体研究所(TSRI)と共同で、自動化された8インチプラットフォームを用いた超伝導量子ビットの新しい製造プロセスを複数開発することに成功した。また、中央研究院の重要課題研究センター(RCCI)に新設された量子チップ製造施設(QC-Fab)と量子コンピューティング試験施設(QC-Test)は、台湾の量子チップ研究開発における重要な節目となった。

QC-Fabは、台湾で量子チップ製造専用に建設された最初の8インチウェハー処理施設である。包括的なプロセス機能とリアルタイム検査ツールを備えたQC-Fabは、高品質の量子チップとパラメトリック増幅器の研究と共に、さまざまな超伝導量子ビット製造プロセスを支援する。また、マルチレイヤーチップ開発を可能にするため3D統合技術も押し進める。一方、QC-Testは、高速・高精度の機器と自動制御を備えた多希釈冷凍機ベースの測定システムを持ち、これにより、量子論理ゲート操作の迅速な最適化が可能となり、トレーニングコストが削減されることが期待される。

量子チップを動作温度まで冷却する希釈冷凍機の内部
(出典:いずれもAcademia Sinica)

中央研究院のジェームズ・リャオ(James C. Liao)院長は、「量子科学の進展には、卓越した人材と最先端のハードウェアインフラストラクチャによる共同作業が不可欠です。中央研究院が開設した2つの主要な施設は、国内の学術コミュニティや研究コミュニティに開放します。中央研究院は、リソースを統合し、プラットフォームを共有することで、台湾の量子技術開発を加速させ、優れた人材を重要な研究分野に引きつけることを目指しています」と述べた。

これらの取り組みは、量子コンピューティングのイノベーションとブレークスルーのための強力な基盤を確立し、台湾を世界の量子技術レースにおける主要な先進国であることを目指している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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