台湾の陽明交通大学(NYCU)は6月16日、代謝機能障害関連脂肪肝疾患(MASLD)があらゆる心血管疾患を発症するリスクを約30%上昇させ、心筋梗塞においては46%も上昇させるという研究結果を発表した。研究成果は学術誌JHEP Reportsに掲載された。
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本研究は、NYCU臨床医学研究所のメイシュアン・リー(Mei-Hsuan Lee)教授が主導し、台湾の30歳以上の成人30万人超を対象とした長期追跡データに基づくものだ。この研究は、アジアにおけるMASLDと心血管リスクの関連性に関するエビデンスの欠落を埋めるものであり、公衆衛生政策と臨床実践に重要な知見をもたらすものとなった。
研究によれば、MASLD患者は非罹患者に比べてあらゆる心血管疾患の発症リスクが約30%、中でも心筋梗塞のリスクは46%高くなる。また、MASLDを適切に予防・管理することで、心筋梗塞の発生率は12%、心血管疾患全体では8%の抑制が可能であると推定している。これらの結果はMASLDが肝臓疾患だけでなく、心血管リスクの重要な指標となることを示している。
同教授は「MASLDは現在、肝硬変や肝がんの主要な原因になりつつあります。肝臓は体内の代謝の中心として機能し、高血圧、インスリン抵抗性、糖尿病といった心血管リスク因子と密接に関連しており、MASLDが全身性疾患であり、広範な代謝異常を反映していることを示しています」と語った。
NYCU臨床医学研究所のメイシュアン・リー(Mei-Hsuan Lee)教授
(出典:いずれもNYCU)
台湾では成人の約30%がMASLDに罹患しているとされ、特に若年層での増加が顕著である。しかし、症状が乏しいために見過ごされがちであり、健康診断での早期発見と生活習慣の改善が重要である。同教授は、「MASLDがもたらす全身にわたるリスクの一般認識を高め、予防と早期スクリーニングにより、最終的には心血管疾患の発生率を減少させることを期待しています」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部