片頭痛を診断する血液バイオマーカーを発見 台湾・陽明交通大学

台湾の陽明交通大学(NYCU)は7月24日、NYCUと台北栄民総医院(TVGH)と中央研究院(Academia Sinica)と国立衛生研究院(NHRI)の研究チームが、反復性片頭痛を検出できる血液中のマイクロRNAを特定したと発表した。研究成果は学術誌Brainに掲載された。

ワン・シュウチュン(Shu-Chun Wang)博士(左から2人目)と研究チームメンバーら
Photo credit: TVGH (出典:NYCU)

片頭痛は、世界で最も蔓延している神経疾患の一つである。世界の人口の約15%が罹患し、女性の罹患率は男性より3倍高い。片頭痛は、脳画像検査による異常が認められず、発作と非発作が交互に出現するため、発作中の血液採取が極めて困難である。このため、科学的進展が妨げられ、何百万人もの人々が未診断または誤診の状態にある。

TVGHの副院長兼NYCU医学部学部長であるワン・シュウチュン(Shu-Chun Wang)博士が率いる研究チームは、反復性片頭痛の患者、慢性片頭痛の患者、健康な対照群を含む120名の被検者を募集した。被検者から得られた血液サンプルの次世代シーケンシング(NGS)を通して、片頭痛状態に関連するマイクロRNAの発現パターンを特定した。この発見は、独立した197名のコホートでも検証された。

研究チームは、片頭痛患者と健康な個人間で、miR-183やmiR-1307-5pなどのマイクロRNAの顕著な違いを明らかにし、マイクロRNAのプロファイルと遺伝的リスクスコアを組み合わせて、片頭痛の有無とリスクを90%以上の確度で特定できる複合予測モデルを開発した。論文を執筆した研究者らは、「片頭痛が血液バイオマーカーを通じて可視化されたのはこれが初めてです」と指摘した。

この研究成果は、神経科学、ゲノミクス、データサイエンスを融合させた学際的トランスレーショナル医療における台湾の成長力を示している。研究チームは、臨床応用を加速し、研究組織間のコラボレーションを拡大することで、このイノベーションを片頭痛患者の利益へ転換することを目指している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る