台湾の陽明交通大学(NYCU)は8月11日、同大学と鴻海研究院(HHRI)の研究者らが、世界最小のチップスケールプロジェクターを開発したと発表した。研究成果は学術誌Nano Lettersに掲載された。
NYCUの教授兼HHRIの半導体部門のディレクターであるクオ・ハオチュン(Hao-Chung Kuo)博士率いる研究チームは、世界初のモノリシック統合メタサーフェス・フォトニック結晶レーザー(meta-PCSEL)を開発した。この技術により、チップスケールの深度投影システムが可能となり、超小型でエネルギー効率の高いARやVR、ウェアラブル端末の新たな可能性が開かれた。
開発されたmeta-PCSELは、研究チームの2024年の研究成果である単眼深度認識と顔認識のためのメタサーフェスとPCSELベースの構造光に基づいており、チップスケールのドットプロジェクションを初めて実現した。これによって、プロジェクターの体積が0.025 mm3にまで縮小され、市販のスマートフォンに搭載されるドットプロジェクターと比較して、2450倍小型化し、消費電力は28.7%削減された。このシングルチップの統合によって、システムの複雑さと電力要件が大幅に軽減され、市場で競争力のあるソリューションを提供する。
このイノベーションは、ナノスケールの光学と半導体統合分野における台湾のリーダーシップを示しており、AR端末から次世代のモバイル端末やウェアラブル端末まで、空間コンピューティングの未来に向けた強固な技術基盤を確立する。研究チームは、この技術がARやVR、空間コンピューティングプラットフォームの小型化と普及を加速させ、業界全体で没入型デジタル体験の可能性が拡大すると予測する。
(出典:いずれもNYCU)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部