「緑の革命2.0」推進には農業教育投資拡大が不可欠 スタンフォード大学APARC

米スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)は8月25日、世界的な食料不安と気候変動に対応するため、AIやロボット工学、リモートセンシング、ビッグデータなどのインダストリ4.0技術を活用した気候スマート型農業への転換を実現するには農業教育への投資拡大が不可欠だと発表した。

現在、世界では約23億人が中程度または重度の食料不安に直面し、2050年までに2011年比で50%以上の食料増産が必要とされる。1950~1970年代の大規模投資は「緑の革命」をもたらし、生産性向上と食料安全保障を推進する上で人材育成と農業研究開発への投資が重要であることを実証した。しかし、米国の農業研究開発支出は2002年のピークから2019年までに約3分の1減少し、基盤の弱体化が懸念される。

次なる変革のために農業教育投資が不可欠な理由として、持続可能な生産性の飛躍的向上、イノベーション導入の加速、労働力のスキルアップ、小規模農家のエンパワーメント、若年層の参入促進、温室効果ガス削減、国家繁栄と国際協力の推進の7点が挙げられる。

世界では農業への大規模投資の機運が高まっている。世界銀行は2022年以降に450億ドル、アジア開発銀行(ADB)は2030年までに400億ドルの拠出を表明。バングラデシュではADBと韓国輸出入銀行の協力で1億5000万ドルの高等農業教育プロジェクトを開発中であり、タイでも農業職業教育への1億2000万ドル規模の投資が進む。ADBはまた、農業大学コンソーシアムと連携して国際的なハイテク農業教育ネットワークの設立を提案している。

課題は膨大だが、機会も同様に多くあり、農業教育と研修への投資は、単に農業に関わることだけではなく、持続可能で食料安全保障を確保し、気候変動に強い未来を築くことにつながると考えられている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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