世界初、電子的に度数調整可能な液晶眼鏡を実用化 台湾・陽明交通大学

台湾の陽明交通大学(NYCU)は9月2日、世界初となる電子的に度数を調整可能な液晶眼鏡を開発したと発表した。研究成果は学術誌Physical Review Appliedに掲載された。

ベンジャミン・フランクリンが二重焦点眼鏡を発明してから2世紀以上を経て、視力矯正技術が大きな進展を遂げた。NYCUフォトニクス学科のリン・イーシン(Yi-Hsin Lin)教授が率いる研究チームは、バッテリー駆動で電子的に光学度数を変えられる液晶眼鏡を世界で初めて実用化した。

この眼鏡には勾配屈折率型の液晶レンズが用いられており、フレームに組み込まれたマイクロエレクトロニクスによって電場を制御することで、レンズの屈折力を調整できる。テンプルアームに触れるだけで、近くと遠くの対象物の焦点を瞬時に切り替えられるのが特徴である。

従来のフレネル型液晶レンズは回折や色収差、画質の低下といった課題を抱えていた。今回の設計はそれらを克服し、連続的かつ滑らかな焦点調整を可能にすることで、日常生活での使用に適した性能を示した。

この成果は台湾の国家科学及技術委員会、イノラックス(Innolux)社、Google Gift USAの支援を受け、ウクライナのキーウ大学および英国リーズ大学との共同研究により達成された。研究チームは液晶レンズの光学挙動を詳細に解析し、スイッチング速度や色収差の影響を評価、さらに量産化の実現可能性を実証した。

開発された眼鏡は小型バッテリーで駆動し、リアルタイムで度数を電子的に変更できる軽量設計である。近視や老眼矯正にとどまらず、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)、人工知能(AI)を活用したマシンビジョンなど幅広い応用が期待されている。

研究チームメンバーら
(出典:いずれもNYCU)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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