APEC保健作業部会、デング熱対策ロードマップを策定

アジア太平洋経済協力(APEC)保健作業部会は9月25日、韓国・ソウルで開催されたAPEC保健経済ハイレベル会合の場で、「2026~2030年デング熱予防・管理推進ロードマップ」を発表した。

同ロードマップは、デング熱の拡大に対し、APEC地域における公衆衛生体制の強化と持続可能な予防策の構築を目的とするものだ。近年、都市化やグローバル化、気候変動の影響により感染が急増しており、2024年には世界で1410万件の症例が報告され、過去最多を記録した。

今回の取り組みを主導したのはペルーであり、同国保健省のエリック・リカルド・ペーニャ=サンチェス(Eric Ricardo Peña-Sanchez)公衆衛生副大臣が開会のあいさつで共同対応の重要性を強調した。同副大臣は、「APECデング熱ロードマップは、地域および地方レベルでの公衆衛生監視と対応能力を高めるための重要な節目です。この枠組みを通じて、協力体制の強化やベストプラクティスの共有、専門知識の活用を進め、地域社会への影響を軽減していきます」と述べた。

ロードマップは、長期的な予防のための国内政策と資金調達の強化、研究やデータ共有、統合的管理措置を通じたイノベーションと監視の加速、政府、企業、学界、地域社会を巻き込むパートナーシップの深化、そしてAPECを通じた地域協力による共同学習や迅速な対応力の向上を重点項目としている。これにより、各国が協調してデング熱の発生予測や早期対応を可能にし、保健システムの持続的な強化を図ることを目指す。

APEC保健作業部会議長のカルロス・ルイス・ベラ・バルバ(Carlos Luis Vela Barba)博士は、今回のロードマップが「APECとして初の枠組みであり、デング熱への共同対応という域内の責任を示すものです。発生を予測し、強靭な保健システムを築くことで、2030年までにより健全なアジア太平洋地域を目指します」と述べた。

本ロードマップは、2025年8月に開催された高級実務者会合(SOM)での議論を基盤としており、緊急対応中心から長期的なシステム強化へと移行するAPECの保健アジェンダを補完する。科学的知見、政策、地域社会の協働を通じ、持続可能な保健体制の構築を目指している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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