液液相分離(LLPS)が一次繊毛形成を促す仕組みを解明 台湾・陽明交通大学

台湾の陽明交通大学(NYCU)は11月5日、細胞が周囲を感知する一次繊毛の形成に、タンパク質が液滴のように集まる液液相分離(LLPS)が関与することを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Cell Reportsに掲載された。

TTBK2とCEP164が液体状の凝縮体を形成し繊毛の成長を促進(模式図)

本研究は、同大学生化学・分子生物学研究所のウォンジン・ワン(Won-Jing Wang)教授とジエロン・ファン(Jie-rong Huang)教授のチームが実施した。一次繊毛は細胞表面に伸びる細い構造で、外部環境を感知する役割を担う。損傷すると、細胞は外部刺激を受け取れず、発達障害や遺伝性疾患につながることが知られている。

研究チームは、ヒト網膜色素上皮細胞を用いて、繊毛形成に関与するTTBK2とCEP164という2種類のタンパク質の挙動を解析した。その結果、これらのタンパク質は構造的に結合するのではなく、LLPSによって液体状の凝縮体を形成し、繊毛の組み立てを促すことを突き止めた。LLPSは、無秩序な領域をもつタンパク質同士が静電気的な力で引き合い、液滴のように集まる現象である。

ファン教授は、「LLPSは近年注目されており、無秩序な領域を持つタンパク質でも結合できることが明らかになっています」と述べた。またワン教授は、一次繊毛が感覚アンテナとして働くタイプや、運動を担うタイプなど多様な機能を持つ点に触れ、今回の成果がLLPSが繊毛形成のプロセスを促進することの初めての証拠を示すものであるとしている。

本研究は、TTBK2遺伝子の変異によって起こる脊髄小脳失調症などの神経疾患とも関連し、異常な相分離が繊毛の組み立てを妨げる仕組みに光を当てるものだとしている。

NYCU生化学・分子生物学研究所のジエロン・ファン(Jie-rong Huang)教授(右)とウォンジン・ワン(Won-Jing Wang)教授
(出典:いずれもNYCU)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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