スレート透水率と深度の関係を評価、地熱開発に新手法 台湾・中央大学

台湾の中央大学(NCU)は11月10日、同大学の研究チームが、変性岩の一種であるスレートの透水率と深度の関係を評価する新しい手法を用いて、地熱開発の初期段階で最も重要なパラメータの一つである岩盤の透水性を明らかにすることに成功したと発表した。研究成果は学術誌Rock Mechanics and Rock Engineeringに掲載された。

研究チームを率いたNCU応用地質学大学院研究所のジアジュン・ドン(Jia-Jyun Dong)教授は、台湾はユーラシアプレートとフィリピン海プレートの収束境界に位置し、急速な造山運動によって高温のスレートが比較的浅い深度まで持ち上げられ、大きな地熱ポテンシャルを有していると説明した。しかし、スレートは高温・高温圧力下で形成される変成岩であるため、孔隙率が低く、流体の流れは主に破砕によって制御される。そのため、スレートの透水性は直接測定が困難であり、地熱ポテンシャル評価において長年の課題となってきた。

この問題に対処するため、同教授の研究チームは、台湾チェルンプ断層掘削プロジェクト(TCDP)に参加していた京都大学の嶋本利彦(Toshihiko Shimamoto)教授から寄贈された高圧透水試験装置を用いて、台東の紅葉層のスレートサンプルを分析した。実験は最大60MPa(深度約3500メートルに相当)の圧力下で行われ、スレートの流体力学的挙動の解明に成功した。これらの結果に基づき、研究チームは岩石マトリックスと破砕ネットワークの両方を考慮した透水性・深度モデルを開発した。

ドン教授は、この研究が地熱探査初期段階に適用可能な効率的な評価プロセスを提供し、掘削や現場モニタリング開始前にターゲットとする地層の流体伝導率を迅速に推定できると強調した。開発された手法は、政府機関や産業界が潜在的な地熱ゾーンの優先順位付けを可能にし、経済的実現可能性の効果的な評価に役立つ。この成果は、台湾における地熱評価技術の科学的基礎を固めるだけでなく、ドイツのハルツ山地やゲッティンゲン地域など、類似した地質環境を持つ地域にとっても参考資料となる。

本研究はスレート層の詳細な調査を通じて、地熱開発初期段階で最も重要でありながら入手困難だった地下流体伝導性に関するパラメータの一つを明確にすることに成功した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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