"Z世代"は家族・友達思いで社会問題解決に意欲も 東南アジアの若者の意識調査

2021年4月28日 小岩井忠道(科学記者)

東南アジアのZ世代(9~24歳)は、自分、家族、周囲を同等に大切にし、上の世代が引き起こした社会問題の解決にも意欲的という結果が、博報堂生活総合研究所アセアンの調査で明らかになった。仕事、夢、情熱、メンタルヘルス、経済的安定などのバランスを取った上で、家族や社会と自分の間で相乗(シナジー)効果を生み出し、世の中や周りの人に良い影響を与えたいと考えているのがこの世代の特徴、と調査報告書は指摘している。

「調和と自尊心」重視

博報堂生活総合研究所アセアンは4月8日、「アセアン生活者研究2021」を公表。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国のうちタイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン6カ国の15~55歳男女約4,500人を対象に昨年9月インターネットによって実施した調査を基にしている。

この調査の狙いは、スマホやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が普及したデジタル時代に育ったZ世代に属する15歳~23歳と、すぐ上のミレニアル世代と呼ばれる24~39歳、さらにその上のX世代(40~55歳)との生活行動や考え方の違いを見出すこと。過去に行われた調査結果も合わせた分析から、人生観、人間関係、幸福に対する考えなどにそれぞれ世代ごとの特徴があることが浮き彫りになった。

調査によると、人間関係ではX世代が「家族」、ミレニアル世代が「自分自身」を大切にする傾向が強いのに対し、Z世代は「自分と、周りにいる人全部(家族、友だち)」を大切にすることが明らかになった。人生観では、X世代が「安全と安定」、ミレニアル世代が「自由と柔軟」を重視しているのに対し、Z世代は「調和と自尊心」。さらに幸福を感じるのは、X世代が「人生における確実性」、ミレニアル世代が「自己表現」であるのに対し、Z世代は「自分と他者のニーズが満たされている状態」という違いも見られた。

友だちで先生でもある親

親との関係でも、ミレニアル世代との関係の違いが分かる。親とは「カジュアル、友だちのような関係か」との問いに「そう思う」あるいは「ややそう思う」と答えたミレニアル世代が43%だったのに対し、Z世代は48%。親から「従来からある社会規範や価値観に従うことが大事だと言われている」については、Z世代の63%が「そう思う」あるいは「ややそう思う」と回答した=下記グラフ(左)。

一方「物事に疑問を持ち、議論をし、自分の意見を持つことが大事だと言われてきた」かについても、ミレニアル世代は「そう思う」が40%だったのに対し、Z世代は48%と多い。親からは「自分の頭で考える」ことに加えて、ASEANに根付く従来からの考えや価値観を理解し継承するようにも育てられており、Z世代自身もその価値観を重視していることが分かる。

親を大切に思っていることは、「成功とは、家族や友人が自分のことを誇りと思える存在になることだ」と考えるZ世代が67%とミレニアル世代の58%を上回ることからもうかがえる=同グラフ(右)。さらにZ世代の61%が「幸福とは、たくさんの人に自分を受け入れてもらえることだ」、70%が「幸福とは、たくさんの友人や大切な人がいて、彼らと繋がりがあり続けることだ」とそれぞれ回答。家族やコミュニティを重視するASEANならではの特徴が時代を経ても薄れずZ世代に継承されている、と調査報告は見ている。

博報堂生活総合研究所アセアン『アセアン生活者研究 2021』

自分自身の考えも大事に

調査報告でもう一つ目を引くのが、Z世代に見られる人生や幸福に対する自分自身の考え方をしっかり持っていることだ。「人生とは、幸せを手に入れることである」に対し「そう思う」と「ややそう思う」を合わせた回答が91%を占め=下記グラフ(左)、「成功とは、周りにどう言われようとも自分が幸せであることだ」と思うという答えも74%に上る=同グラフ(右)。ミレニアル世代が、「幸せ」を「成功を積み重ねる」ことと答えた人が最も多いのと好対照だ。ASEANでもメンタルヘルス(心の健康)が社会問題化しており、SNSで有名タレントの自殺といった情報などに触れることも多いZ世代は、地位や金銭が「成功」とは限らないと既に理解していることを示す結果、と調査報告は見ている。

博報堂生活総合研究所アセアン『アセアン生活者研究 2021』

今回の報告書はインターネットによる調査に加え、昨年10月に実施した面談ないしオンラインでのインタビュー調査結果も取り入れている。こちらの調査は、6カ国それぞれ9人ずつのZ世代(17 歳~23歳)に対し、グループインタビューしており、そこで得られた中からZ世代の次のような声を紹介している。

 

「本当の民主主義を求めている。今のような半端な民主主義ではなく、独裁者のいない社会を。汚職をなくすことは不可能だが、減らすための方法はあるはず」(タイ大学生、22歳)

 

「LGBTQの友人がたくさんいる。私たちは自分の意見を発言する権利を持っているからこそ、このようなさまざまな問題に影響を受けている人々のためにSNSなどで発言していくべきだと思っている」(フィリピン高校生、17歳)

 

「私の理想の人生像で最も重要なことは社会貢献活動。現在も友人と一緒に活動し、恵まれない子供たちに英語やパブリックスピーキングを教えたり、野生生物の保護、川の清掃などをしたりしている」(インドネシア高校生、17歳)

 

Z世代は、経済的不安、格差、政治不安、紛争、人権問題、コロナなど、上の世代が生み出した問題が多く残る不安定な社会に生きている。仲間と一緒に社会課題を解決したいと考えていることが分かる、と調査報告は分析する。

意外な消費スタイルも

デジタル製品・技術に囲まれて育ったZ世代ならでは、と思われる意外な特徴も、調査から浮き彫りになった。ものを買い求める傾向が強いという消費スタイルだ。「モノは借りるよりも買って所有したい」が94%と、「買って所有するより借りる方が好き」の30%をはるかに上回る=下記グラフ。「所有して安心したい、安定感を得たい」という気持ちに加え、C to C(消費者同士の取引)の中古売買アプリや、オンラインショッピングサービスの返品サービスが豊富なため、購入後、手放せる方法がたくさんあるのも理由と推測される、と調査報告は見ている。

博報堂生活総合研究所アセアン『アセアン生活者研究 2021』

博報堂生活総合研究所アセアンは、ASEAN(東南アジア諸国連合)各国の生活者を研究する企業内シンクタンクとして、2014年に博報堂がタイのバンコクに設立した。ASEAN各国の視点に立った調査・分析や、ASEAN各国でフォーラムを開催する活動を行っている。