電気・電子機器廃棄物リサイクル タイ・日本合同実証事業開始

2021年6月7日 小岩井忠道(科学記者)

タイ・バンコク近くで電気・電子機器廃棄物を再利用するタイと日本の合同リサイクル実証事業が始まった。タイでは生活水準の向上に伴い電気・電子機器廃棄物が増え続けている。一方、回収や処理に関する技術開発や法律の整備は遅れている。実証事業は、日本の高度な技術を活用した効率的なリサイクルシステムの導入に加え、適正なシステム導入を可能にするガイドラインの策定を支援するのが目的。5月24日に実証事業の開始を公表した日本側の事業主体である新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、実証事業の成果を将来は他のアジア諸国にも展開する考えを明らかにした。

日髙洋行エンタープライズ・ゲートウェイ工場の電気・電子機器廃棄物リサイクル装置写真提供:(株)アビヅ

省エネ型資源循環制度導入が狙い

実証事業は、NEDOが2016年から進める「アジア省エネルギー型資源循環制度導入実証事業」の一つ。タイ工業省工場局(DEPARTMENT OF INDUSTRIAL WORKS)とNEDOが、2017年にタイで実施した実現可能性調査を踏まえ、2019年9月に実証事業の基本協定書(MOU)を締結している。実証事業は、NEDOと委託企業であるアビヅが、タイ工業省工場局の協力・支援を受けてタイでリサイクル事業を手がける日髙洋行エンタープライズのゲートウェイ工場(チェチュンサオ県プレーンヤーオ郡)内で始めた。

工場内では、電気・電子機器廃棄物を破砕し、銅やステンレス、アルミなど再利用可能な金属を効率よく回収する装置が稼働している。タイ国内では処理できない金や銀などの貴金属と鉛や亜鉛など有害廃棄物との混合物を再資源化する取り組みも、並行して日本国内で始める予定だ。日本の家電リサイクル法や小型家電リサイクル法を参考に、タイに適した廃棄物処理に関わるガイドラインを策定する共同検討作業も始める。

NEDOの「アジア省エネルギー型資源循環制度導入実証事業」は、東南アジア諸国連合(ASEAN)をはじめとするアジア地域の新興国に対し、資源循環に関わる制度構築を支援するのが目的。都市部の非効率な資源の利用、大気汚染や廃棄物の増加などに対する政策的な対応が後手に回りがちな国々に対し、これまで環境負荷を低減させてきた日本のノウハウを提供する実証事業を相手国で実施する。さらにこれらの成果により地球規模での適正な資源循環を実現することも目指している。

自動車リサイクル実証事業も先行

タイとの間では、すでに2019年11月から「使用済み自動車リサイクル実証事業」も行われている。タイ工業省、工業団地公社(Industrial Estate Authority of Thailand)とNEDOが締結した基本協定書(MOU)に基づき、チョンブリ県にあるタイのグリーンメタルズタイランド社(豊田通商のグループ企業)のピントン工場内に自動車解体重機が運び込まれ、使用済み自動車から効率的に有用金属などを回収するシステムの実証事業が進む。

タイでは自動車の解体は手作業で行われているため、1日当たり1台程度の処理に留まる。実証事業は、1日当たり20台を解体処理し、タイの廃棄物処理の適正化に貢献するとともに、アジア諸国のリサイクルモデルの確立も目指している。