アジアのチェンジメーカー:手ごろな価格でアジアに医療を届ける reach25のブーティ氏

2021年6月17日 AsianScientist

reach25のCEOであるエドワード・ブーティ (Edward Booty) 氏は、手ごろな価格で医療を提供することで、医療サービスが行き届かない地域をより良い健康的な暮らしへと導く。

AsianScientist - 世界各地の農村部や低所得地域では、「健康は富だ」という格言があるが、これは残酷にも現実となりつつある。病院代や薬代等の医療費の自己負担が原因で貧困に陥る人は、年間1億人に上ると言われている。

治療を受けるか、家族を養うことを優先するかで迷う人がいれば、医療機関が遠方にあることや移動手段がないことから、医療を受けられない人々もいる。

例えばフィリピンでは、人口の多さで上位10州に入る地域の中心部から最寄りの医療機関までの平均距離は6キロメートルを超えている。この数字は平均して他の全ての自治体の2倍である。また、フィリピンは列島という構造のため、最も近い病院から40キロメートル離れている島もあり、この場合には移動にボートが必要となる。

地理的な障害や、あるいは高額な医療費が原因で、世界の人口の52%の人々が医療を受けることができない。こうしたことを受けエドワード・ブーティ氏によって設立されたのが、reach52という組織である。reach52は、低所得国や中所得国の十分な医療サービスを受けていない層に対し、革新的なデジタル医療プラットフォームをもたらすことを目指している。

パンデミックにより遠隔治療が増え始める前から、reach52は既に医療部門の領域と影響を広げるため医療のデジタル化を推進していた。しかし、経済的に恵まれない家庭の多くはインターネットがなく、デジタル領域へのアクセスに困難があったことから情報格差は問題を引き起こした。

ブーティ氏は次のように語る。

「消費者に直接アプリ提供する形式で始めたのですが、上手くいきませんでした。複雑な健康状態の高齢者など、最も複雑な医療ニーズを持つ人々へは、デジタルチャンネルでは到達できないのです」

ブーティ氏によれば、資源の制約がある環境を念頭に置いた上で構築された現在のreach54アプリはオフライン・ファーストのプラットフォームである。信頼できるインターネット通信がなくても完璧に機能し、インターネット接続が必要になるのは、時々アップロードしたりデータを同期したりするときだけである。

コミュニティーメンバーはアプリ使用に関するトレーニングを受け、他の居住者の健康状態を分析し、公衆衛生キャンペーンの実施や主要な医療組織へ居住者をつなげる役割を担っている。

ブーティ氏によれば、これらのアクセスマネージャー(ほとんどが女性)はプログラムに個性を加え、戸別訪問を行いコミュニティーの居住者の健康意識を高めている。reach52は、医療サービスを求める個人に面倒な手続きを強いることなく、医療サービスを最も必要とする人々に医療を提供している。

これらの地域の医療制度をさらに支えるべく、ブーティ氏と彼のチームは彼らがサービスを提供しているコミュニティーの医療ニーズをより良く理解するためにデータ分析プラットフォームを作った。そこから得られた洞察は、医療従事者のためのトレーニングセッションから薬物投与の現場での戦略まで、reach25によるさらに効果的な介入を行うために使用される。

医療へのアクセス強化には協力が必要なため、製薬会社や医療技術ベンチャー企業の製品を直接地方や遠隔地に届けられるよう、ブーティ氏はreach52の活動への協働体制を企業に求めた。この新しい分配モデルは移動時間の節約につながるだけでなく、Verge HealthTech Fund等の投資から支えられたことで、手ごろな価格での医療サービス提供を保証している。

reach25のデジタル医療プラットフォームは、コミュニティーの医療従事者に権利を与えることで、高度な訓練を受けた専門家による対面での医療サービスの需要を減少させることに貢献している。

医師と患者の比率で医師1人に対し5,000人であるカンボジアのように、世界保健機関(WHO)が推奨する比率である医師1人に対し1,000人の患者という比率を大きく超える国々を考慮すると、reach25の能力強化アプローチは革新的である。

こういした格差はブーティ氏にとって、やるべき仕事が未だ多く残っているということを意味している。同氏は、reach25による活動の持続可能性を保証するため、reach25のプログラム推進を支えるより多くの金融工学企業とのパートナーシップに注目している。

「私たちのコミュニティーのほとんどは銀行口座を持っていません。そのため、他のサービス-例えば薬の購入-の提供が困難になりリスクも伴います。私たちは、フィンテックと保険に投資する必要がありますが、これらが私たちのオフライン・ファーストのデジタルプラットフォームと組み合わさると、規模拡大に必要な基盤を与えてくれるでしょう」とブーティ氏。

reach52は既にフィリピン、カンボジア、インドにおいて300万人を超える人々にサービスを提供しているが、ブーティ氏は数年の間にセネガルからインドネシアまで5カ国へとプロジェクトが拡大することを目指している。

持続的な努力によりreach52のネットワークは、52%という数値をはるかに低い数値へと引き下がることに成功した。公平な医療というビジョンが現実になりつつあるのだ。

「私たちが、あらゆる主要なグルーバル医療企業と共同し、全ての人々が健康でいられるようなユニークなエコシステムを作り上げ、5,000万人の人々が医療を受けられるように支援をしているという、そんな未来を見たいと思っています」とブーティ氏は話している。