アジアの新鋭科学者たち:ゲーム理論で気候変動問題を支援 フィリピンのアヴィソ教授

2021年6月21日 AsianScientist

世界で気候変動の影響がますます懸念される中、キャスリン・アヴィソ(Kathleen Aviso)教授は環境に関するより良い決断を下せるよう数学モデルを用いて導く。

AsianScientist ― 気候変動は私たちの世代における最大の課題だと言われている。実際その通りである。それが及ぼす影響の大きさに加え、意義のある措置を推進するには大きな政治的決断が必要であり、それがネックとなって気候変動の交渉は幾度となく停滞してきた。フィリピンのデ・ラ・サール大学のアヴィソ教授のような科学者たちは、抗しがたい気候危機に立ち向かう意思決定を支援しようと、ゲーム理論に目を向けている。

ゲーム理論とは、簡単に言えば意思決定に関する数学的研究のことだ。ゲーム理論では、企業、国、個人といった相互に依存し合う主体が、どうすれば戦略的意思決定を下してベストな結果を得られるかを綿密に提示する。そのため、アヴィソ教授は、低炭素エネルギー技術の選択から気候崩壊時の人的資源の最適な割り当てにいたるまで、あらゆることのために数学モデルを作成している。

アヴィソ教授は長年にわたり、社会的意義がますます高まるその研究でさまざまな賞を受賞してきた。2008年には、フィリピンの国立科学技術アカデミーから優秀科学論文賞(Outstanding Scientific Paper Award)を受賞した。また最近では、2016年のASEAN-米国女性科学賞(ASEAN-US Science Prize for Women)の最終選考に残った9人のうちの1人となった。アヴィソ教授は、気候変動、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、その他さまざまなことについて自身の考えを語った。

キャスリン・アヴィソ教授と研究仲間。デ・ラ・サール大学にて(写真提供:アヴィソ教授)

1. ご自身の研究内容を簡単に要約すると?

持続可能な産業システムを設計するための数学モデルを開発しています。

2. 最も誇りに思う、完遂した研究プロジェクトは?

10年前に博士論文の研究の一環として、政府が産業界に影響を与えて環境保全技術に投資させる方法をシミュレーションし最適化する、ゲーム理論に基づくモデルを開発しました。これは、私のキャリアの中で最も引用された論文で、現在でも持続可能性の問題と密接に関連しています。

3.今後10年で自分の研究で何を成し遂げたいですか?

コンピュータモデルを使った自分の研究に基づいて将来の政策や規制を知ることができれば非常にやりがいがあります。

4. この研究分野に進んだきっかけは?

自分の恩師や、彼らの研究に対する情熱から刺激を受けました。私をこの分野に導いてくれたのは彼らです。

5. これまで研究を行ってきた中で、最も困難だったことは?

困難をいちいち口にするつもりはないのですが、女性としてまた2人の息子の母親として、職場と家庭での責任のバランスをとることは非常に難しい点があると言えます。もちろんこれは、多くの女性科学者が直面する課題です。

6. 現在、学術コミュニティが直面する最大の課題とは?また、その解決方法は?

人類における最大の課題は気候変動です。これは、文字通り人間の存続の危機です。そのため、私の最近の研究は低炭素エネルギーシステムに関するものが多くなっています。

7. 研究者になっていなかったら、何をしていましたか?

子どものころはプロのバレリーナになりたいと思っていました。今になって思えば科学の道を選んでよかったです。そうでなければ、今の年齢ではバレリーナを引退していた頃でしょうから。

8. 仕事以外でリラックスするためにしていることは? 興味のあることや趣味は?

仕事以外の時間は、家族や友人と過ごしたり、犬の世話をしたりして過ごすのが好きです。

9. 自身の研究に、何か世界の問題を根絶する力があるとしたら、何を解決したい?

気候変動以外でいま取り組まねばならない問題は、COVID-19のパンデミックとその厄介な波及効果でしょう。私は最近、この問題に関する論文を同僚と共同で執筆し、このパンデミックが産業界、ひいては、堅牢な経済に依存して生活している人々に与える影響を、分析することの重要性を強調しました。

10. アジアで研究者を目指す方にアドバイスするとしたら?

アジアの科学者には、私たちは地域の問題だけではなく世界の科学的問題に貢献できるのだということ、そして常に幅広い視点から問題と解決策をみるべきだということを伝えたいです。発展途上国の研究者は、適切な訓練と考え方とを身につければ、ローカルな科学以上のことが行えるようになります。