アジアのチェンジメーカー:光速度での高速データ伝送の限界に挑むドーン・タン准教授

ドーン・タン准教授は、光固有の特性を利用し、データ伝送のスピードを超高速にしている。

AsianScientist - 『スター・ウォーズ』や『マーベル・シネマティック・ユニバース』といった世界では、宇宙のある場所から別の場所へと宇宙船が瞬く間に飛んでいる。その超高速移動は「ワープ・スピード」として知られるSF(サイエンスフィクション)の定番となっており、光速よりも速いと言われている。真空状態で約300,000km/sの速度に達する光があれば、架空の宇宙船がこのような恒星間の移動を比較的容易に達成できても不思議ではない。

ワープ・スピードがやはりSFの域を出ていないことは確かであるが、光の速度を利用することで利益を得ることができている極めて現実的な応用として、データ伝送がある。

「データ伝送の媒体として利用できるものに、光より速いものは他にありません」とシンガポール工科デザイン大学(SUTD)でフォトニクスデバイス・システムグループを率いるドーン・タン(Dawn Tan)准教授は語る。

光とその粒子であるフォトンの特性を研究し利用することは、フォトニクスとして知られる物理学の分野に入る。1960年代に端を発するフォトニクスのイノベーションは、レーザーやファイバーオプティックスといった現在のユビキタス技術につながっている。後者は特に、ビデオストリーミングやオンラインゲームなど、現在の一般的なアクティビティで高速・広帯域のデータ転送を可能にすることにより、データ伝送に革命をもたらした。

しかし、タン氏の目標はさらに高く、データ転送の限界の壁をさらに押し広げようとしている。彼女の専門分野は、シリコンフォトニクス、つまりフォトニクスとエレクトロニクスが交差する新生の分野である。簡単に言えば、シリコンフォトニクスは、コンピューターチップ内で光を利用してデータを伝送する。

タン氏は、「シリコンフォトニクスは、エレクトロニクスよりも少ない熱で高速でデータを伝送できるため、電力消費量も削減できます。シリコンフォトニクスはエレクトロニクスと同じインフラストラクチャを使用しながら同等以上のパフォーマンスを達成できるため、ものづくりよりも安価になるのです」と説明する。

彼女が研究で取り組もうとしている問題の一つが、光ファイバー通信でのデータ伝送を減衰させてしまう光の分散である。タン氏によると、「光は伝搬するにつれて分散し弱くなるもの」であるという。

光の分散は、無視すると光を散開させ、運んでいる情報も長距離にわたって劣化する。

そのため、タン氏は、シリコンフォトニクス研究の一環として、より優れた光増幅器の構築を目指している。オーディオシステムが備えている音量を大きくするアンプと同じく、光増幅器も光を明るくし、光の伝搬能力を高める。

「周期的な増幅がなければ、受信側がデータを受信して読み取ることができるだけの十分な光が得られません」

タン氏の研究グループは、最終的に、さまざまな現実世界でのフォトニクスの応用に光を当てようとしている。

「人類にとって役立つ実用的な方法で、目に見えない光の波長を利用したいと思っています」とタン氏は述べた。