外国資本のハイテクや環境関連企業に優遇税制 タイ投資委員会、コロナ特需を追い風に

2021年8月26日 JSTシンガポール事務所

タイ投資委員会(Board of Investment: BOI)は今年6月末、一定条件を満たす外国資本のハイテク企業を対象に、税制上の優遇措置を導入することを承認した。この措置によって、既にタイ国内で稼働している外資系企業は事業拡大がしやすくなり、また、これからタイへの進出を検討している企業にとっても、タイに拠点を新設するきっかけの一つになることが期待されている。

これに加えて、BOIはリサイクル可能なプラスチックや生分解性容器などの製造を行う外資系企業を対象に、法人税の免税などの優遇措置を導入することになった。背景には、タイでは廃棄物の削減、再利用、リサイクル(3R)が進まず、大量の廃棄物による環境への悪影響がある。近年、タイ政府は、環境への配慮や持続可能性、二酸化炭素(CO2)排出量削減の重要性に言及し、脱プラスチック社会への転換を進めてきた。

しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大に伴って、昨年3月にはバンコクなどの都市部を対象に、非常事態宣言が発令。それ以降、都市部では、フードデリバリーの利用が増加。加えて、スーパーでは総菜やパンなど、それまではビュッフェ方式で提供していた食品の個別包装が進み、食品の包装資材であるプラスチック製の廃棄物が激増した。この問題を解決するために、リサイクル可能なプラスチックや生分解性容器などが必要となり、免税などの優遇措置を導入して外資系企業の参入を促すことになった。

BOIは、海外からタイへの投資促進を目的に、タイ政府が設立した機関である。同国は、それまでの繊維、食品、雑貨などを製造する軽工業から、自動車、機械、鉄鋼業など重工業への進展に資する海外からの投資を加速させるため、1977年に首相を議長とするBOIを設置。以来、一定条件を満たした外資系企業に対して、法人税の一定期間免除、通常認められていない事業用の土地所有許可、事業用設備機器や原材料の輸入税減免、外国人就労許可の簡素化などの優遇措置を与えている。タイ国内に事業所をおく日本企業のほとんどが、BOIから認定を受けている。

自動車・家電製造拠点が集積しているタイでは、近年の電子制御システムを搭載したエコカーや電気自動車、ハイテク家電の市場拡大に伴い、既存の製造拠点に付随する形で、電子部品の製造が盛んになっている。タイ政府は電子製品を国内最大の輸出カテゴリーとし、またBOIは電子製品の製造が国内の産業高度化に資するものと位置づけ、こうしたハイテク分野を中心に、外国企業の誘致に力を入れている。日系企業を筆頭に、自動車や家電製造の一端として、電子部品の製造ラインへの追加投資を行っている。

今般のCOVID-19は悪い面ばかりでなく、感染拡大に伴う生活スタイルの変化は同国の経済にとっては追い風にもなっている。外出制限によって、遠隔授業やテレワーク、オンラインショッピングの利用、オンライン動画の視聴、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用などが人々の日常の一部となり、パソコンやスマートフォン、タブレットなど、デジタル端末の需要が一層高まった。その結果、デジタル端末に欠かせない半導体や記憶媒体、電子部品の製造など、タイ国内のハイテク産業への需要が ますます増大する結果となった。

タイは、外資系企業の誘致による先端技術の導入を礎に、産業構造の高度化と先進国入りを目指している。COVID-19拡大による人の流れや投資額の減少は、外資系企業の休業や縮小、撤退などをもたらし、同国の経済発展に大きな打撃を与えることになった。一方で、長期にわたる巣ごもり生活によって、電子部品や包装資材の製造分野に、コロナ特需をもたらした。今回承認された新たな優遇措置が、タイの経済発展回復の切り札となることが期待されている。