アジアの新鋭科学者たち:免疫システムの革新的なツールを開発したテイ博士

2021年10月12日 AsianScientist

シンガポールのアンディ・テイ (Andy Tay) 博士は、生物医学工学の限界を押し広げることにより、驚くべき新しい方法で私たちの体の自然な防御を強めている。

アンディ・テイ氏

AsianScientist - インターネットを少し検索してみると、免疫システムを高めるためにはビタミンCなどのサプリメントを飲むこと、十分な休息をとること、健康的な食事を続けることが、一般的に勧められている。しかし、シンガポール国立大学(NUS)の助教授に新しく就いたアンディ・テイ (Andy Tay) 博士は、免疫システムの可能性を最大限に引き出す革新的なツールを発明し異なる方法を示した。

このほか、小さな磁性細菌ロボットが、信じられないほどの精度で腫瘍に薬を届けることができることを想像していただきたい。テイ博士はまた、組織の再生を促進し痛みを調整することのできる磁性3Dゲルを開発した。この便利な発明によって、テイ博士は2019年にフォーブス30歳未満の30人 (Forbes 30 Under 30) に選ばれた。

さらに、免疫システムを新たな高みに引き上げた彼の努力が評価され、テイ博士は世界経済フォーラムの2020年クラス・オブ・ヤング・サイエンティスツ (Class of Young Scientists)の一人にも選ばれた。昨年選ばれた名誉ある若き科学者の中で、唯一のシンガポール人である。テイ博士は Asian Scientist Magazineとのこのインタビューで、自身の研究について内部者の視点を述べ、若手研究者として今まで経験したことを披露した。

1. ご自身の研究内容を簡単に要約すると?

私たちの免疫システムは、最高の防御システムの一つです。免疫システムを設計することにより病気を予防し治療できたならば、その可能性がどれほどのものであるか想像してみてください。

2. 最も誇りに思う、完遂した研究プロジェクトは?

このプロジェクトでは、磁性細菌をマイクロロボットとして進化させるためのマイクロツールを開発しました。微生物学、生物工学、天体物理学という3つの分野が3大陸にまたがり行われたプロジェクトだったので、私は誇りに思っています。学際研究のプラスの影響とグローバルな科学コラボレーションの重要性を実証する素晴らしいプロジェクトです。

3. 今後10年間で、どのようなことを研究で成し遂げたいか?

私のチームが生み出した知的財産の一部でも商業化されることを期待しています。そうなれば、私の研究チームはより低価格でより効果的ながん治療薬を作り、医療に具体的な影響を与えていたことでしょう。

4. この研究分野に進んだきっかけは?

私は挑戦的な問題に惹かれる問題志向型の人です。それと同時に、医学改善のための研究利用にも非常に意欲的です。そのため、私は細胞を基礎とするがん免疫療法の分野に踏み込みました。私の研究室は、がんと戦う免疫システムを設計するためのさまざまな材料とツールを開発しています。シンガポールでは、がんは死亡率の30%を占めているのです。

5. これまで研究を行ってきた中で、最も困難だったことは?

博士課程の学生であった私は、研究室の主任研究員が直面していた資金調達の問題により、いくつかのプロジェクトを担当しなければなりませんでした。多くの研究分野に触れ、たくさんのことを学んだので、良い結果になりました。しかし、この経験から研究における大きな問題が浮き上がりました。若手研究者への支援が十分でないため、学生の研究の進捗が妨げられるなどの悪い影響が出ます。助成機関が若手研究者助成金のような具体的な行動を取り、若手研究者を支援することを期待しています。

NUSの生物医学工学部のテイ博士の研究室は、免疫系の可能性を最大化する新しい材料の設計に焦点を当てている
(写真提供:本人)

6. 現在、学術コミュニティが直面する最大の課題とは?また、その解決方法は?

一番の課題は、科学者が学界以外のキャリアについてよく知らないことです。教授職は非常に競争が激しいです。それでありながら、多くの研究者は、産業、コンサルティング、教育などの他の分野の職についてトレーニングを受けることはありません。博士課程の学生とポストドクターに対し、より包括的なトレーニングを行う必要があります。そうすれば、学界以外でスキルを応用し、科学を使用して社会に利益をもたらすことができます。

もう一つの大きな課題は、今でも科学者は論文が発表されているジャーナルに基づいて主に判断されているということです。表彰委員会や職務選考委員会が影響力の大きいジャーナルに掲載された候補者を求めても問題はありませんが、研究所は候補者によるメンタリング、アウトリーチ、さらには多様性イニシアチブなどの要素も考慮する必要があります。ヨーロッパと北アメリカでは、その評価文化を変えようとする取り組みが続けられています。その勢いがアジアと世界の他の地域で同様の活動が行われるきっかけとなることを願っています。

7. 研究者になっていなかったら、何をしていたか?

私は科学とアウトリーチに強い関心があるので、科学を実践しつつ人々と交流できる仕事を選んでいたと思います。考えられることとして、科学者と交流しながら科学について学び、書くことができるサイエンス・コミュニケーターが候補に挙がります。

8. 仕事以外でリラックスするためにしていることは? 興味のあることや趣味は?

ジムで体を動かすことを楽しんでいます。私の研究の主な目的は健康の促進であり、運動は私の信念を実践する一つの方法です。運動は私がストレスを解消し、心をリフレッシュするのに役立ちます。最近は友達と一緒にサイクリングやハイキングも始めました。自然がその規模の大きさだけで十分な安心感を与えてくれるのは驚きます。

9. 自身の研究に、何か世界の問題を根絶する力があるとしたら、何を解決したい?

老化による病気の問題を解決したいと思います。これは、実際のところ、心血管の健康、糖尿病、がん、メンタルヘルスなどといったほとんどの慢性疾患を含むため、非常に貪欲な目的です。

10. アジアで研究者を目指す方にアドバイスするとしたら?

アジアは急速に成長している大陸であり、研究に参入して抜きん出ようとすれば、ますます競争が激しくなるでしょう。私は意欲的な研究者に対し、そこに身を置きなさいとアドバイスします。サイエンスコンペティションやインターンシップに参加し、それぞれの分野の最高のものから学ぶことです。学習の機会を積極的に探しましょう。