アジアの新鋭科学者たち:量子学分野を自在に操るシンガポールのロー助教授

2021年11月1日 AsianScientist

量子学分野は、ロー・フアンケン(Loh Huanqian)助教授にとって遊び場所である。彼女はそこで、レゴブロックのような原子や分子を組み立て、スケーラブルな量子コンピューティングを展開している。

ロー・フアンケン助教授

AsianScientist - 私たちが触れる物体から、食べる物、呼吸する空気まで、私たちの周りのすべては物理法則に支配されている。しかし、原子レベルで詳しく見ると、古典物理学ではうまく理解できなくなっている。

量子物理学の世界に足を踏み入れてみるといい。この分野は、原子や亜原子粒子のスケールで自然の物理的特性を研究している。過去100年の間に研究者たちは大きな進歩を遂げ量子論を理解するようになった。量子論を適用することで、20世紀の偉大な物理学者が夢見ることしかできなかった技術を構築できる。シンガポール国立大学(NUS)のロー・フアンケン(Loh Huanqian)助教授はそのような研究者の1人である。

ロー助教授のチームは、極低温の原子と分子を構成要素として利用することにより、これらの粒子の運動、量子状態、配置を正確に制御するツールを開発し、それらを使用して先端材料を模倣したモデルを構築する。同時に、これらの量子の「レゴ」ブロックを使用して、従来のものよりも性能の優れたスケーラブルな量子コンピューターを構築することもできる。

その業績から、ロー助教授はロレアル-ユネスコ女性科学賞の国際新進才能賞(International Rising Talent)に選ばれ、2019年には世界経済フォーラムの若手科学者の1人として認められた。 ロー助教授は彼女の研究の目標や彼女の仕事の背景にあるインスピレーションについてAsian Scientist Magazineに教えてくれた。

1. あなたの研究を一言でまとめると、どのようなものでしょうか。

私は、自然界の複雑な現象をモデル化する小さな量子の構成要素として単一原子を使用しています。

2. 完了した研究プロジェクトの中であなたが最も誇りに思っているものを教えてください。

私が最も誇らしいと考える研究プロジェクトは、私の研究室が光ピンセットの配列に単一のナトリウム原子をうまくトラップしたことです。個々の ナトリウム原子について制御を確立することは、量子ビルディングブロックとして原子を実現し、自然界の興味深い物質をシミュレートするために重要です。

私たちはゼロから実験を構築しました。レーザー冷却については目標のいくつかを比較的容易に達成できましたが、単一のナトリウム原子をトラップすることは、軽い質量と励起状態という特性のために困難であることがわかりました。それにもかかわらず、私の学生たちは研究室で辛抱強くやり通し、困難を克服するために非常に熱心に研究していました。私は、そのような創造性と決意を示してくれた私のチームを特に誇りに思っています!

さらに、配列内の単一原子を制御することで、並列量子状態の初期化と、量子シミュレーションにおける量子ビットとしての原子の読み出しへの道が開かれます。

NUS量子情報研究所にあるロー教授の研究室は、単一粒子、単一量子状態レベルでの分子の操作に焦点を当てている(写真提供:同研究所)

3. 今後10年間の研究で何を達成したいと思いますか?

量子シミュレーターで研究することで、高温超伝導体の理解のような重要な材料科学の問題についての洞察を得て、持続可能性の問題に取り組むことができることを願っています。

4. 誰(または何)がきっかけとなって、この研究分野に入ったのでしょうか?

私は、科学者でもある兄からいつも強く影響を受けてきました。今まで、私に刺激を与え、やる気を起こさせてくれた優秀なメンターがたくさんいました。

私は学部生の頃に原子物理学、分子物理学、光学を私の希望研究分野として選びました。私は量子物理学に興味を持ち、原子は量子物理学の研究にあたり最も明確な体系の一つであると思いました。 レーザーで原子や分子を制御するシンプルさが気に入りました。

5.あなたが研究で経験した最大の困難は何ですか?

私にとっての最大の困難は、学術研究と母親業の両立です。今までの家族、同僚、学生のサポートに感謝しています。

6. 今日の学術研究コミュニティが直面している最大の課題は何ですか?また、それらを修正するにはどうしたらよいでしょうか?

学術研究はますます狭く専門的なものになっていますが、気候変動やパンデミックなどの人類の差し迫った問題を解決するには、さまざまな分野の科学者と技術者が積極的に互いに手を差しのべ、協力する方法を学ぶという学際的な取り組みが必要です。

このような学際的な協力を促進することは、依然として最大の課題の1つです。 現在、より多くの学者がこの問題を認識しており、科学者を評価するための新しい研究助成制度やさまざまなルーブリックでこの問題に取り組むための措置を講じています。

2019年世界経済フォーラムの新チャンピオン会議で、コンピューティングの未来について語るロー助教授(写真提供:本人)

7. もし科学者にならなかったら、代わりに何になっていたでしょうか?

おそらく教師かソーシャルワーカーになっていたでしょう。若い人たちと交流し、彼らがその可能性を実現するのを助けることは私の喜びです。現在、教えることも研究することもできるのはうれしく思います。

8. リラックスするために、仕事以外で何をしますか? 興味や趣味はありますか?

家族と一緒の外出を楽しんでいます。

9. 力と資源を持ち、あなたの研究で世界の問題を根絶することができるならば、何を解決しますか?

気候変動です。このような複雑な問題を解決するには、一貫した学際的な取り組みが必要です。世界の高まるエネルギー需要の管理を視野に入れ、量子シミュレータに関する私の研究が、解決の一部に貢献するのに役立つことを願っています。

10.アジアの意欲的な研究者にどのようなアドバイスをしますか?

好奇心と開かれた心を持ち続けることです。粘り強く研究活動を行っていけば、途中で失敗に遭遇しても、最終的には成功が訪れるでしょう。

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