アジアのチェンジメーカー:スタートアップ企業の成功を導くエンケル氏

2021年11月26日 AsianScientist

エンジェル投資家であり、Antlerのパートナーであるリサ・エンケル (Lisa Enckel) 氏は、自身の演劇の経歴を利用して、ディープテック・コミュニティの中でスタートアップ企業同士の協働を推進する。

AsianScientist - ブロードウェイからロイヤル・シェイクスピア・カンパニーまで、劇場はまばゆい光、魅力的な音楽、ドラマチックなセンスがあふれ生き生きとしている。 舞台裏では劇場プロデューサーが、舞台がつつがなく進むよう懸命に働いている。俳優が感動的なストーリーを伝えられるように尽力する一方で、最後のカーテンコールを迎える日が来ないよう資金集めに奔走している。

元劇場プロデューサーであるリサ・エンケル 氏は、ディープテック企業を経営することはショーを上演することによく似ていると話す。リサ・エンケル氏は現在、シンガポールを拠点としており、世界的なベンチャー企業投資会社であるAntlerのパートナーである。

俳優は即興力を駆使してドラマチックな緊張感を発し、聴衆の心を捉える。それに対して、開発者は技術に基づくソリューションを導入して教育や持続可能性などの分野のアンメットニーズに応える。

「俳優も開発者も何もないところから物を作り、その仕事とスキルで何百万もの人々に影響を与えることができます」とエンケル氏は語った。

世界中で差し迫る課題に対処するために、ディープテックの創設者たちは、人工知能(AI)やブロックチェーンといった最新の技術進化を研究室から商業空間に移動させている。しかし、仕事を継続させるには十分な投資が必要である。

エンジェル投資家であるエンケル氏はAntlerのチームと協力して、ディープテックのアイデアの可能性を識別し、初期段階にあるスタートアップ企業に資金を提供し、成長を加速させる。スタートアップ企業のメンバーはプラットフォームを通じてコーチから緊密な指導を受け、技術ノウハウ・商業ノウハウを問わずAntlerネットワークのグローバル・アドバイザーとつながる。

さらに、協働精神が浸透しているため、ディープテック・コミュニティは豊かなものになっている、とエンケル氏は説明する。創設者たちは世界中のクリエイティブな仲間から洞察力を学び、共有する一方、Antlerの投資委員会は地元のスタートアップ企業の生態系に深く根づき、これらの新進企業を適切にサポートしている。

Antlerのプログラムは迅速な試験と実際的なフィードバックを奨励することにより、ディープテック企業が顧客のニーズに合わせて製品を開発し、改良する手助けをしている。エンケル氏は、投資を獲得するためには、特にプロトタイプが作成される前の構想段階において、製品と市場の適合性を検証することが最も重要であると述べた。

エンケル氏は「初期段階で何かを過剰に設計するのは簡単ですが、その後、時間の経過とともに繰り返すことや変更するのが難しくなります」とし、「できるだけ早い時期に、さまざまな種類の人々に、何に取り組んでいるのか示してください。そうすれば幅広い貴重な洞察とフィードバックを得られます」と話す。

製品が市場に確実に適合するものであると分かったならば、Antlerはプレシード時期に資本を投資し、設立者たちが会社設立など規制の基礎知識を使い自身の足場を見つけることができるように指導する。スタートアップ企業が資金調達と成長戦略を計画するならば、エンケル氏とチームメンバーは企業を潜在的な投資家、パートナー、顧客と結びつける責任を負う。

このようなリソースが用意される中、シンガポールの求人マッチングプラットフォームであるSamaなどのスタートアップ企業は成功への準備を整える。移民労働者は 外国の代理人を利用したために借金を負うことはなく、WhatsAppを通してSamaにコンタクトを取る。このプラットフォームは採用をアクセスしやすく透明性の高いものにするために、求職者が持つスキルに基づいて求職者と業界の役割をマッチングさせ、給与を容易に母国に送ることのできるデジタルウォレットを提供する。

アジアの他の場所では、インドネシアを拠点とするスタートアップ企業のSampinganがビジネス管理ソリューションを開発している。Sampinganが提供するstaffing appというアプリは候補者のスクリーニングを行い、統合し、それに従って仕事を割り当て、労働者に報酬を与える。一方、 workforce management systemというアプリはリアルタイムで業績データを監視し分析する。Sampinganは企業がプロジェクトを実行して規模を拡大するのを支援するだけでなく、国内の何千人ものフリーランサーに経済的価値も与える。

エンケル氏とそのチームは、スタートアップ企業が早期から吸引力を持ち、成長の痛みを克服し、ゼロから効果的な構築ができるよう支援する。このようなイニシアチブは、多くの企業を閉鎖させ、医療アクセスから食料安全保障までいくつかの問題を悪化させたパンデミックの中でも続けられている。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の混乱も、エンケル氏のディープテックへの投資を思いとどまらせることはなかった。実際には全く逆のことが起こった。企業が業務の中に技術を多く採用するにつれ、ディープテック分野は業界全体に新しく効率的なソリューションを提供しようとする。

「私たちは世界の問題を解決する多くのスタートアップ企業を必要としています」とエンケル氏は強調した。「私が特に入れ込んでに行っていることは、自分で会社を立ち上げようと最初の一歩を踏み出す勇気を持つ人々を支援することです。」

エンケル氏の揺るぎない献身は、Antlerをコンセプトの段階から現在の状態に成長させたことを含め、多くの初期段階の企業で10年近くを費やしたことから来ている。エンケル氏は成長の促進について当事者意識を持つだけでなく、小さなチーム、厳しい納期、不十分なリソースによる苦闘を直接理解している。

これらの経験と演劇の経歴を持つことから、エンケル氏は制限を即興力の機会と見なすようになった。エンケル氏は、Antlerが明日の企業に投資し、より多くのスタートアップ企業が同様の考えを持ちつつ革新的なことを行い、飛行に成功することを願っている。

「これらの制限があるために、創造的に考えることができるようになります。何もないところから始めるよりも、制限のあるところから始める方が創造はずっと容易になります。スタートアップ企業の創設者として、私たちは制限があることを祝い、贈り物と見なすべきです」とエンケル氏は締めくくった。