アジアの新鋭科学者たち:グリーンディーゼル開発へ触媒の研究をするレスタリ博士

2022年01月28日 AsianScientist

ウィトリ・ワヒュー・レスタリ (Witri Wahyu Lestari)博士は、環境により優しい燃料を作るために必要な触媒を開発している。

ウィトリ・ワヒュー・レスタリ 博士

AsianScientist - 何世紀にもわたる社会経済の発展は環境を犠牲にして達成されてきた。石油や石炭などの汚れたエネルギー源は工場や車両に電力を供給するとともに大気を汚染してきた。気候変動は今日、世界が直面している最も切迫した問題の1つになっている。

幸いなことに、インドネシアのスブラス・マレット大学のウィトリ・ワヒュー・レスタリ 博士をはじめとする科学者たちは、環境により優しく、そして発展を推し進めることのできる方法を模索している。彼女は、持続可能な未来への道に向けて、主にグリーンディーゼル(化石ではない再生可能資源から生産された燃料)を作るのに必要な新しい触媒の設計を研究している。

彼女は革新的かつ高度な研究を続け、それにより、2016年ASEAN-US女性科学賞、最近では、2018年発展途上国の若手女性科学者のためのOWSDエルゼビア財団賞など、数々の賞を受賞した。彼女は Asian Scientist Magazine 誌のこのインタビューで研究と抱負について詳しく語ってくれた。

1. あなたの研究を一言でまとめると、どのようなものでしょうか。

私たちの研究は、分子からの機能性ハイブリッド多孔質材料の開発に役に立っています。環境保護、エネルギー貯蔵、ドラッグデリバリーに利用できる合成材料と天然材料を使います。これらはすべて、持続可能な開発目標に焦点を合わせています。

2. 完了した研究プロジェクトの中であなたが最も誇りに思っているものを教えてください。

私が最も誇りに思っているものは、ロレアル-ユネスコ女性科学賞プログラムから資金を受けた研究プロジェクトです。このプロジェクトでは、天然ゼオライトを鉄ナノ粒子で修飾し、それをパーム油から作る環境に優しいディーゼル(またはグリーンディーゼル)の生産で触媒として使用しました。私たちが作った触媒の効率性は製品に変換すると90%と高く、C15-グリーンディーゼル留分を選択的に製造することができました。

私たちは自分たちの技術の特許を取得し、評判の良い査読付ジャーナルに研究を発表する予定です。昨年、私のグループはScopusに収録されているジャーナルと会報に7つの論文を発表しました。

3. 今後10年間の研究で何を達成したいと思いますか?

私の研究が社会を良い方向に変え、世界に影響を与えることを願っています。特に、環境持続可能性、代替エネルギー源、生物医学の分野でですが、これらは本質的には合成素材と天然素材の利用に基づく分野です。私は自分の研究を支援してくれる国際的な助成金を得たいと思っています。そして、いつの日かノーベル化学賞を受賞するという野心を持っています。

ウィトリ・ワヒュー・レスタリ博士(左から4人目、座っている女性)と彼女の研究室のメンバーたち (写真提供:同博士)

4. 誰(または何)がきっかけとなって、この研究分野に入ったのでしょうか?

高校の化学の授業で化学が大好きになりました。それで、大学で化学を勉強することにしました。ドイツのライプツィヒ大学で修士号と博士号を取得しているときに、私は研究が大好きだと気が付きました。初めのうちは、研究は難しいと感じましたが、患者のためのメンターであるエバマリー・ヘイ・ハーキンス (Evamarie Hey-Hawkins) 教授の影響を受けました。彼女は多くのプロジェクトで指導と監督を行い、多くの影響力のある論文を発表しました。彼女は私のロールモデルであり、科学者として私なりの方法で人々を助けるためのきっかけとなりました。

科学者になるには情熱が必要であり、科学でのキャリアは多くの点で非常にやりがいのあるものになると思います。たとえば、現在の技術を改善したり、エネルギー、食品、環境などの分野における重要な概念を十分理解することによって、世界の問題の一部を解決する役に立ちます。私たちはあらゆるものを論理的かつ偏見のない目で調べるので、私たちの研究は人生の意味をより深く理解することにも役に立ちます。

5. あなたが研究で経験した最大の困難は何ですか?

私の母国(インドネシア)では、研究の実施には確かに問題があります。化学物質の供給、分析機器、文献へのアクセスにはいくつかの制限があるため、研究の進歩が遅れることがあります。共同研究をすれば、これらの制限を超えて、研究の進歩を加速するのに役立つと信じています。

他に、才能のある学生を採用するという問題もあります。私の研究グループへの参加を望む学生は、志望動機書、学業成績、英語能力に基づいて選ばれます。学生には、高いレベルの研究を行い、交換留学生として共同研究に参加したり、国際セミナーで研究成果を発表したりする準備をしてほしいと思います。

6. 今日の学術研究コミュニティが直面している最大の課題は何ですか?また、それらを修正するにはどうしたらよいでしょうか?

発展途上国で科学者としてのキャリアを追求することは、他に類を見ないほど問題があります。私はドイツ、アメリカ、日本などといった先進国の大学を卒業しました。そのような科学者にとって、研究環境は非常に異なるため、帰国するとリセットされたように感じることがあります。

発展途上国では、順応性と革新性を持ち、有望なテーマに焦点を当てる必要があります。国内国外共に、パートナーと共同研究を行うことは非常に重要です。また、研究結果を高品質で影響力のあるジャーナルに掲載することも大変です。

研究費用はかなり高額になることがあり、高レベルの研究を追求するには資金が必要です。私自身、母国の大学ですでに研究領域を確立されている先輩研究者たちから、資金を集めるための研究プロジェクトの設計と作成の方法について多くのことを学びました。先輩研究者たちは、国際的なジャーナルへの掲載方法に関する戦略についても教えてくれました。私は毎年、政府や財団からの財政的支援を受けているので、多くの学生が、最終課題は私の指導の下で行いたいと思っています。

7. もし科学者にならなかったら、代わりに何になっていたでしょうか?

高校教師になっていたと思います。

8. リラックスするために、仕事以外で何をしますか?

料理です。夫と子供と一緒に釣りも楽しんでいます。

9. 力と資源を持ち、あなたの研究で世界の問題を根絶することができるならば、何を解決しますか?

私は持続可能性の問題に取り組み、バイオ燃料に基づく持続可能なエネルギーの開発に貢献することに集中します。そのためには、バイオ燃料生産で触媒として働く新しい材料の設計と作成が不可欠です。

10. アジアの意欲的な研究者にどのようなアドバイスをしますか?

専門分野の状況がどのようなものであっても、研究をやり遂げてください。 また、研究活動を人々の支援に捧げ、社会に役立つ機会を探してください。

上へ戻る