中小企業は既存の波に乗ることが重要...シンガポールのラマチャンドラン氏

2022年02月22日 AsianScientist

アジアのヘルスケア分野で30年以上の経験を持つシンガポールのIPIイノベーション・アドバイザーのラマチャンドラン・ラジャマニッカム (Ramachandran Rajamanickam) 氏は、地元の中小企業が業界の波を乗り越えることができるよう、熱心な支援を行っている。

IPIのラマチャンドラン・ラジャマニッカム (Ramachandran Rajamanickam) 氏

AsianScientist - 栄養やサプリから医薬品、医療技術に至るまで、シンガポールのヘルスケア分野は、イノベーションと起業家精神にあふれている。そのため、消費者は常にヘルスケアに関する次の画期的な大発明を待ち望んでいる。シンガポールのヘルスケア市場は今年214億シンガポールドルに成長すると予想されており、いくつもの新興企業や中小企業が繁栄と競争が存在する市場に参入することと予測される。

ヘルスケア分野ではイノベーションに対する関心がますます高まっているため、地元企業はオープンイノベーションを通じて資源をまとめ、協働することで利益を得ようとしている。

特にヘルスケア業界では、先駆者たちが集まり、IPIその他のパートナーと、あるいはTechInnovationなどのイベントを通じて開発について話し合うことのできる多くの場が存在する。

IPIイノベーション・アドバイザーのラマチャンドラン・ラジャマニッカム氏は、栄養業界と製薬業界での数十年の経験を生かして、新興企業と中小企業がオープンイノベーションの過程の中で成長できるよう、ガイダンスとアドバイスを提供している。

正しい波に乗る

可能な限り最高の製品を新しく考え、設計するには、企業はまず、何が消費者の興味を引くのか探る必要がある。

ヘルスケアとイノベーションについて30年以上の経験を持ち、市場の動向を把握しているラマチャンドラン氏。今後の健康トレンドとしてイノベーターが注目している主なものは肝機能と脳血管性認知症の2つであると考えている。

彼の説明によると、糖尿病は、10年以上前には特に話題になることはなかった。しかし、症例が急増し始め、政府がキャンペーンを実施すると、糖尿病と境界型糖尿病の診断や低減に焦点を当てた製品がうなぎ上りの人気となった。

今後のトレンドを知ることは役に立つが、イノベーターは新しいアイデアと既に認識されているものとの間の微妙なバランスをとる必要がある。ラマチャンドラン氏は、中小企業は現在の傾向を慎重に検討し、認識されていない分野や市場が過度に飽和している分野への参入を見合わせるのがよいと話す。

そのうえでラマチャンドラン氏は、大金をかけて自分自身の手で作るより、既存の認識の波に乗ることが重要であると言う。ただ、「次の流行に先んじるのはいいのですが、市場の準備がまだないほど先であってはなりません」とも。

「特に中小企業や新興企業にとって、新しい分野で画期的なパイオニアとなることほど刺激的なことはないかもしれませんが、産業界、あるいは政府により認識がある程度高められた分野の方がリターンを早く得ることができるのです」

明確なビジョンを保つ

明確な知識とノウハウを備えたイノベーションチームが製品を市場に投入するためには、開発と商品化のプロセス全体を通じて、対象見込み消費者に関する明確性を保つことが不可欠である。

ラマチャンドラン氏によれば、多くの若い企業は明確性の欠如という共通の問題に直面している。製品開発には多くの時間を費すが、ターゲット層を明確にし、その層のニーズを捉え、製品がそのニーズを満たす方法を理解するための時間を十分に費やしてはいない。

「それは、私を含めて、多くのイノベーション・アドバイザーが練り上げようとしている部分だと思います。私たちは、イノベーターたちの情熱を現実に変えることができなければなりません」

たとえば、現在、ラマチャンドラン氏は、認知力を向上させるサプリメントを製造している会社と協働している。その協働の中で、ターゲットとする顧客層、市場参入の可能性、消費者とのコミュニケーションなどが、全体的に明確でないこと分かった。

この会社の設立者は神経科学者であり、医師その他の専門家に製品を説明することはできても、消費者には説明できなかった。ラマチャンドラン氏が介入し、指導すると、この会社は製品のメリットを明確にし、消費者を獲得できるようにコミュニケーション方法を変えていった。

オープンイノベーションを通じたプーリング

ラマチャンドラン氏は常にオープンイノベーションに戻ってくるが、それはシンガポールの成長するヘルスケア業界で真の勝者となるためである。新興企業から巨大企業まで、すべての企業には限界がある。オープンイノベーションを利用すれば、専門知識と資源を一緒にプーリングし、利用可能なものを最大化できる。すべての企業は、さらに大きな成長を進めることができる。

しかし、新興企業や中小企業が新しく市場に参入する時、利用可能な支援や協力してくれそうな他企業について意識することはないかもしれない。

これについては、ラマチャンドラン氏のようなイノベーション・アドバイザーが大きな助けとなるであろう。ラマチャンドラン氏はそのキャリアの中で数多くの製品の市場参入に関わってきた。

ラマチャンドラン氏はコラボレーションと支援に役立つ幅広い人脈を持ち、科学を消費者に魅力的なものにする方法を十分理解している。新しい中小企業が成功するか、実験室に戻っていくかの違いは、そのような支援と情報が得られるか否かにかかっている。

「シンガポールにはイノベーションに役立つこのようなエコシステムがあります。そのため、私はシンガポールが大好きです。シンガポールではアイデアを共有し、お互いの能力を活用できるのです」とラマチャンドラン氏。

さらに、ラマチャンドラン氏は、協働するときに共有すべきものと秘密にしておくべきものについて、常にアドバイスを提供する。このようなアドバイスがあれば、新しい起業家は有害な誤りを防ぐことができる。

ラマチャンドラン氏をはじめとするイノベーション・アドバイザーは、明確性を教え、多くの潜在的な協力者へのアクセスを拡大し、開発と商業化に関する専門的なアドバイスを提供することで、ヘルスケア市場への参入を検討している地元企業に多くのことを与えてくれる。

ラマチャンドラン氏は「私たちはシンガポールの中小企業を応援したいのです。この30年から35年にかけて業界で学んできたことを、いかに地元の中小企業のために役立てるか。それが私たちの情熱の原動力です」と締めくくった。

オープン・イノベーションを利用して成長を加速させることに興味があるならば、IPIイノベーション・アドバイザー・プログラム(下欄参照)をチェックするとよい。経験豊富なコンサルタントから専門的な指導を利用する方法について詳しく知ることができるだろう。

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