5GやDXに適応する最先端合金の開発に注力...シンガポールのスティーブン・タング 氏

2022年03月15日 AsianScientist

シンガポールに本社を置くニコ・スチール(Nico Steel)社は、最高の人材と共に培った豊富な経験を生かし、独創的な考え方と革新的なアイデアを奨励し、トレンドを先取りする。

AsianScientist - エレガントなローズゴールドジュエリー、生活に不可欠なスマートフォン、強力な鋳鉄製の鍋、最新のストリーミングサービスを搭載したテレビ等...。これらには共通の要素が1つある。それは合金である。

さまざまな金属同士、または金属と非金属の組み合わせである合金は、2027年までに110億米ドル規模の産業になると予想されている。合金は使用されるすべての異なる原材料の最高の特性を統合したものであり、一般的に使用されるデバイスや金属アイテムの多くに適した素材である。

3人の兄弟チームが率いるニコ・スチール社は、顧客の要求を満たす設計を行い、カスタマイズされた金属合金の作成を専門としている。ニコ・スチール社は将来を見据えて、研究開発の取り組みを5G技術とDX(デジタルトランスフォーメーション)に使える最先端の合金の開発にも注いでいる。

5Gデバイスはモバイル性が高く、多機能になる傾向があるため、多くの場合、使いやすさを支える特別な特性を備えた素材成分が必要となる。強度対重量比、熱放散、電磁保護に関しては、既存の標準的な金属素材では対応しきれない。

5Gについては2024年までに世界で19億人が加入する見込みのため、ニコ・スチール社は革新的な取り組みを強化し、将来の5G要件その他に対応できる軽量の熱素材の開発を開始した。

ニコ・スチール社のエグゼクティブディレクター兼マーケティング製品イノベーション責任者であるスティーブン・タング (Steven Tang) 氏は、オープンイノベーションのメリットと、同社がどのように創造的な思考を活用して競争に勝ち抜いてきたかついて下記のように語った。

1. シンガポール市場と海外市場の両方において、ニコ・スチールのコアコンピタンスは何ですか?

私たちのコアコンピタンスは、マテリアルソリューション技術です。お客様の設計上の問題を解決し、製品設計の目標を達成できるマテリアルソリューションを提供するのです。

2. ニコ・スチール社の歴史の中で、オープンイノベーションが正しい道であると確信したターニングポイントはありましたか?

2002年、私たちは会社が金属業界で成長し続けるためには、革新的でなければならないことに気づきました。大量販売だけに集中するのではなく、完全なマテリアルソリューションを提供する必要があることに気づきました。社名をニコ・スチール・ソリューションズに変更し、「イノベーションを考えろ!」というスローガンを掲げました。

3. 今まで、オープンイノベーションはニコ・スチールにどのようなメリットをもたらしましたか?

素材開発とプロセス開発の研究開発への投資を開始しました。これまでに、当社独自のニコのブランド素材の名前で、30を超える特許を得て10の新しい素材合金を開発しました。

当社のニコのブランド素材は、デバイスのデザインの公式素材ソリューションとして多くの大手ブランドに選ばれています。2017年には、現在世界最大のドローン会社であるDa-Jiang Innovations (DJI) と緊密に協力して、超軽量長距離ドローンの強化をしました。

望ましい距離と接続性を実現するために、DJIは200グラム未満の軽量ドローンを構築する必要がありました。また、感度を高くし、飛行中にワイヤレス制御デバイスに接続させる必要がありました。

私たちが提案したソリューションCNT-AL50は、設計要件を満たすためのさまざまなテクノロジーのハイブリッドとなりました。CNT-AL50は、ドローンに搭載するシールド缶を構築するために使用されます。可能な限り最高の電磁シールドを提供しますが、ドローンの重量を200グラム未満に保つことができます。

CNT-AL50は、ニコ・スチール社の2つのテクノロジーを組み合わせたものです。CNTと呼ばれる 連続鋳造のメッキ済のスズと、AL50と呼ばれる超高強度で軽量のアルミニウム合金を組み合わせたのです。現在でも、DJIのシールド缶ソリューションの供給源となっているのは当社だけです。

4. ニコ・スチール社のオープンイノベーションの文化をどのように奨励しているのですか?半導体業界の新技術や製品性能を向上させる方法を探すのに役立つ実用的な方法は何ですか?

当社の文化は、「DRIVE」という一単語を中心としています。

  • D:Daring creativity(大胆な創造性)
  • R:Regarding change as an opportunity(変化をチャンスと見なす)
  • I:Intense passion(強い情熱)
  • V:Visionary customer and supplier partnership(将来を見通した顧客とサプライヤーのパートナーシップ)
  • E: Excellence(卓越性)

当社のスタッフはこのDRIVEを念頭に置きつつ、当社の素材ソリューションで解決できる問題を探すことができます。既存のソリューションで問題を解決できない場合は、私たちはこれらの問題を克服できる新しいテクノロジーを調べ精査するように「駆り立て」られます。

たとえば、レノボ(Lenovo)は、高級ノートパソコンの1つに深刻な熱の問題がありました。レノボの熱機械エンジニアは動作中のCPUチップセットから直ちに熱を除去する方法を探そうと、とても苦労していましたが、スペースが限られているため、熱移動ソリューションを新たに加えることはできませんでした。

当社が調査したところ、キーボードの表面積がCPUの熱を拡散するのに十分な大きさであることがわかりました。それを生かすためには、従来のステンレス製キーボードの機械的強度を保つ一方、可能な限り熱伝導率の高い素材を使用する必要がありました。

そのような素材は現在市場に出回っていないため、素材の再配合に資源を費やし、当社の新しい銅合金ブランドであるCuN700を開発しました。CuN700は純銅が持つ高い熱伝導率を誇る一方、ステンレス鋼の強度を持ちます。試験と検査を経て、CuN700はレノボの新しい高熱キーボード素材として承認されました。

5. 社内とパートナーとの両方について、オープンイノベーションに取り組む過程で学んだ教訓は何ですか?

革新的になるためにはスタッフ、サプライヤー、その他プロセスにおけるパートナーの考え方を変える必要があります。皆が型にはまらない考え方をする必要があります。 この共通のビジョンと考え方を共有する適切なスタッフとパートナーを特定することは非常に困難になっています。主な人材にはマインドマップのトレーニングを行い、操作プロセスには革新的なプログラムを導入しています。

6. IPIはニコ・スチールのオープンイノベーション過程をどのように強化しましたか?

IPIは、さまざまな情報源から多くの新しいソリューションと発明を教えてくれ、それらが当社の技術を新しいものにしてくれました。テクノロジーのトレンドに関する直接的な情報を入手することで、当社の開発チームは、将来の業界のニーズに合わせて新しいテクノロジーやプロセスに集中できるようになりました。

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