斬新なフレーバーの開発に強み...ピーター・オング博士

AsianScientist-シンガポールをはじめアジア各国に拠点を持つKHロバーツ(KH Roberts)社は信頼とコラボレーションの精神を背景に、斬新なフレーバーを市場にもたらす方法を熟知している。

AsianScientist - 消費者は一袋のポテトチップスやアイスクリームを食べるたびに、フレーバリストの仕事を直接体験している。フレーバリストは化学を使用して、消費者が気に入る食品の多くの香りと味を作り出すことを仕事とする人々である。食品香料市場は今日、天然成分と合成成分の両方を背景に、146億米ドルという大きな世界的産業を生み出している。

高品質のフレーバーとアロマを使用しようとする企業は、食品強化にあたりKHロバーツ社のようなフレーバー・アンド・フレグランス (flavor and fragrance:F&F) メーカーに注目している。1968年に設立されたKHロバーツ社は、スナックから子供用ビタミン、さらには家畜飼料まで、あらゆるものの香りと味を向上させる素材を創造できる力強いR&D文化を持つ。その結果、作り出される製品は、おいしさで消費者を喜ばせるのはもちろん、十分に安全で厳格な規制と倫理基準を満たさなければならない。

KHロバーツ社のCEOであるピーター・KC・オング (Peter KC Ong) 博士は、よりよい新製品の需要に遅れを取らないことは重要であると十分理解している。2010年以来、同社はオープンイノベーションに取り組んでおり、業界のパートナーと協力して新しい原料を開発している。オング博士は今回のインタビューで、KHロバーツ社が世界中の消費者に安全でおいしい新フレーバーを提供するという使命を成功させるためにオープンイノベーションがどのように役に立ったのかを話した。

1.KHロバーツ社のコア・コンピテンシー(中核となる技術)は何ですか?

食品にとって味は重要です。味は間違いなく、飲食物を購入する消費者の決定に影響を与える要因です。当社は、世界中の食品や飲料、心身の健康、医薬品などのさまざまな分野の消費者向け企業に対し、自然に忠実なアロマと味を創造し、製造しています。

消費者の文化と味の好みは様々です。私たちはそのような消費者グループのさまざまな要求を満たすために食品の味を設計し、香りをカスタマイズするという深い専門知識を持ち、それに誇りを持っています。フレーバーの創造と工程の開発は、市場の消費者に関する長年の蓄積された知見とフレーバー製造の専門知識を通じて構築された能力です。

2.KHロバーツ社の歴史の中で、オープンイノベーションが正しい道であると確信したターニングポイントは何でしたか?

設立以来、コラボレーションは当社の企業DNAの一部でした。当社の事業には消費者の好みに合ったフレーバーの特徴を特定し、創造することが含まれるため、適切な内容とフィードバックを得るには、お客様と協力することが不可欠です。他のすべての業界と同様に、コラボレーションを行うと企業秘密と知的財産は当然ながら懸念事項となります。失うことへの恐れは常に利益を上回ります。

ターニングポイントは2010年頃に来ました。長期的な戦略的パートナーと最初のオープンイノベーション・プロジェクトを開始したたときです。プロジェクトの内容は簡単なものでした。両社内の専門知識を活用して、さまざまなフレーバー成分を共同で開発したのです。結果は私たちの予想を超えており、両社にとって収益が大きく上がることが分かりました。当社は今日、オープンイノベーションについて、当社のビジネスを可能にしネットワークの乗数効果を生み出すのに役立つコアバリューとして認識しています。

3.オープンイノベーションは今までKH ロバーツ社にどのようにして利益をもたらしましたか?

パートナーと協力することで、革新的なコンセプトとフレーバーのプロトタイプ作成と試行を加速することができます。イノベーションパートナーは、多くの場合、機能的で優れた共鳴版として機能し、商品化プロセスのスピードアップにも役立ちます。オープンイノベーションでは全体的に、様々な範囲の、新しい傾向のある消費者行動、新しい成分、テクノロジーを知ることもできます。

4.社内で、そして外部パートナーと、どのようにしてオープンイノベーション文化を築くのですか?

私たちは常に社内のマネージャーと協力して、イノベーションの範囲を伝え、プロジェクトを更新します。すると、マネージャーは、範囲外を示すものに触れずに、安全かつ確実に「自由なイノベーション」を行えると感じることができます。

また、コラボレーションのために施設内に物理的なスペースを提供します。これには、統合された研究室と試験工場が含まれており、パートナーと協力してアイデアの相互受粉を推進することができます。第一に「決してノーと言わない」ことは、私たちが社内で実践しているイノベーションの合言葉でもあります。社内のイニシアチブであろうと、パートナーから任せられた困難なプロジェクトの一部であろうと、オープンイノベーションでは、相互の期待を一致させるための良好なコミュニケーションが不可欠です。

さらに、創造過程ではこれらの利点を活用しながら、社内外の多様な専門知識と経験を認め、理解しています。

5.中小企業であれ、多国籍企業であれ、パートナーとオープンイノベーションに取り組む過程で同じようなどのような教訓を学びましたか?

優れたイノベーションには時間がかかり、革新的な取り組みを協働して成功させる秘訣は、似たアプローチと信念を持つ適切なパートナーを特定することであることを学びました。プロジェクトチームのスピードは、最も遅いパートナーに合わせなければならないからです。

すべてのイノベーションプロジェクトが商業的な実行可能性と成功をもたらすわけではありません。パートナーが学習や過ちを受け入れ、それらを基に構築または改善することが重要です。最も重要なことは、すべてのパートナーとそのスタッフが、知的財産の共通の原則を理解し、共通の尊重を持っている必要があるということです。

6.シンガポールのIPIはKHロバーツ社のオープンイノベーションのプロセスをどのように強化しましたか?

IPIの協力を受けることで、当社はイノベーションパートナーのネットワーク、テクノロジー、資源を拡大することができました。また、さまざまな観点から、現在のイノベーションの状況について深く知ることができます。 全体として、IPIとの連携により、当社はより幅広いイノベーションエコシステムに接続し、当社独自のネットワークだけでは持てない機会を持つことができます。

(2022年03月31日公開)

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