半導体分野で新興企業の成長を支援...シンガポールのアドバイザー・チョク氏

AsianScientist-シンガポールのイノベーション・アドバイザーであるチョク・ヤーン・フング (Chok Yean Hung) 氏は、市場動向を把握し、適切なアドバイスを行い、半導体分野における新興企業の成長とイノベーションの旅を支援する。

パンデミックの最中に、世界では電子機器の需要が急増した。その結果、半導体産業は2021年までに約4,694億米ドル(約57兆円)に達すると予想されている。

この進歩に大きく貢献したのはインテル、NVIDIA、クアルコムなどの国際的大企業であるが、半導体の新興企業も重要な役割を果たし、クラウド、人工知能 (AI) 、光学技術の限界を押し広げた。

有望な道のりではあるが、小さいチームから国を代表する企業となることは、どの業界であっても困難な旅となる。すべての新興企業の約90%が挫折する。それは1年目かもしれないし、10年目かもしれない。

シンガポールのIPIイノベーション・アドバイザーのチョク・ヤーン・フング (Chok Yean Hung) 氏は、成功の可能性を高めようと、新興企業の成功を支援し、チームが新興企業から上場企業に移行できる最良の成長戦略を特定する。

上場企業にする

チョク氏は半導体業界で30年以上の管理と技術の経験を持つ。チョク氏の関心は、新興企業や中小企業 (SME) を持続可能な成熟した企業にすることである。

同氏は2つの半導体新興企業を無事上場させただけでなく、困難に陥り倒産の危機のあったAEMホールディングスを、CEO任期中に10億ドル規模の企業に変えた。 CEOであった頃、チョク氏はAEMの企業文化を活性化し、ビジネスの実施に役立つ新しいシステムを導入し、スタッフに投資して知識や技能を強化した。

「これにより、私たちは付加価値からイノベーションによる新しい価値の創造に移行しました。時間の経過とともに、顧客にとって、コスト競争力のあるパートナー以上の、真のパートナーになることができました」(チョク氏)

同氏は、長期的なビジネスの持続可能性を確保するために、新興企業も中小企業も業界のメガトレンドを継続的に分析し、市場のギャップを特定し、問題点に対処するために可能性を方向転換する必要があると強調した。

「重要なのは、トレンドと市場のニーズを注意深く監視しつつ、長期的な視野で可能性に投資することです」とチョク氏は話す。

事業拡大を検討しているほとんどの企業に当てはまることだが、チョク氏は、中小企業が拡大に着手する前に特に考えるべきいくつかの考慮事項を挙げる。

何よりもまず、競争環境や潜在的な顧客の賛同などといった市場要因を評価すべきである。次に、イノベーションの模索を一緒に行ってくれそうな、その分野の専門家など、正しい資源と専門知識に積極的に投資する必要がある。

最後に、企業は、成長計画を維持させるために、十分な資金または投資家を確保する必要がある。

アドバイザーの役割

半導体分野のコンサルタントとして豊かな経験を持つチョク氏は、再活性化に貢献した2つの企業の例を挙げてくれた。1つの例は、機器改造関連の特許のあるソリューションを市場に投入する方法についてアドバイスを求めていた中小企業であった。課題は、既存のサービス事業に悪い影響を与えることなくこの知的財産 (IP) を収益化することにあった。

これはデリケートな問題だったが、チョク氏は、分野に関する深い知識を利用して、業界人にソリューションを販売するために会社が取ることができる指針と方法を教えた。

もう1つの例では、企業は成長と拡大の手段としてデジタル化を検討していた。チョク氏は、ビジネスの拡大に必要な、競争上の重要な優位性を特定するように経営陣を指導した。

「長期的なよい成長に向かう方向転換を目的として、既存の事業を補完できるかもしれない技術を取得する可能性について検討してもらいました」とチョク氏。

その後、IPIイノベーション・テクノロジーチームは、IP調達と技術展望調査でこの企業を支援し、意思決定を容易にさせた。

トレンドを研究しチャンスをつかむ

5G、AI、IoT(モノのインターネット)、その他突然出現するテクノロジーが急増しているため、半導体業界は急速に進化している。チョク氏は、競合他社に遅れることなく、混乱の中でチャンスをつかむために、企業は革新と投資を開始する必要があると述べている。

同氏は「グローバル化を目指す中小企業にとって、チャンスは、将来の市場に最適な新製品を作り出すことにかかっています。このためには、他社を吸収するか、組織の成長のいずれかを通じてIPを確保することが重要です」とアドバイスする。

「既存の製品とソリューションを持っている企業であれば、中国が短中期的にユニークな機会を与えてくれます。シンガポールで多国籍企業を支援する企業であれば、大企業がより高い回復力を求めて現地化を検討しているため、ビジネスチャンスは増えると思われます。このために重要なことは、大企業が真に必要とするものを明らかにし、大企業のための革新的なソリューションに投資することです」とも。

貴重な経験を持つチョク氏は適切なアドバイスをする。半導体企業が市場の将来のトレンドと現在の複雑性を乗り越えようとするときにはバリューチェーン全体を見ての方向性を教える。

(2022年04月04日公開)

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