クリーンな輸送へ電動バイクを設計...シンガポールのレザ博士

AsianScientist-自動車愛好家のムハマド・レザ・タウレザ (Muhammad" Reza" Taureza) 博士とスコーピオ・エレクトリック(Scorpio Electric)社のチームは、よりクリーンな未来の輸送を実現するために電動バイクを設計している。

レザ博士のような自動車愛好家にとって、仕様は良い乗り心地の鍵となる。色のアクセントからヘッドライト、加速、モーター力まで、心地よいエンジン音からライダーが渋滞をすり抜けるときのなめらかな動きまで、細部に至るまでが重要である。

東南アジアでは、オートバイは一般的で経済的な輸送手段である。シンガポールでは約14万人の人々がオートバイを利用しており、インドネシアとタイでは80%以上の家庭がバイクを所有している。

従来のオートバイは、内燃エンジン (ICE) が燃料を燃焼させ、化学エネルギーを運動エネルギーに変換して動く。ただし、このエネルギーの多くは、変換中に熱として失われる。プロセスが非常に非効率的であるだけでなく、オートバイは環境を汚染する有害な温室効果ガスを排出する。

シンガポールに本社を置くスコーピオ・エレクトリック社の最高執行責任者兼エンジニアリング責任者であるレザ博士とチームは、電気を利用するオートバイについて考えている。「私は、各バイクの動き方を知り、ワクワクするプロジェクトを掘り下げ、うまく走るバイクを作りたいと考えています」とレザ博士は述べる。

スコーピオ・エレクトリック社はX1バイクという電動バイクを新しく発売した。このバイクは充電式リチウムイオン電池に蓄えられた電気エネルギーから電力を作り出す。レザ博士によると、電動バイクはエネルギー効率が大幅に向上し、バッテリー源によっては環境にやさしいものにすることができる。

彼の説明によると、電気エンジンはエネルギーの約80%を使用してバイクを前進させることができる。対照的に、従来のICEバイクが変換できるのは利用可能なエネルギーのわずか20%である。

X1バイクの最高速度は時速105kmにまで達する。しかし、電動バイクを主流にするということは、従来のオートバイに匹敵するスペックを持つということだけではない。

「私たちは考え方を変えることから始めなければなりません。電動バイクはまったく異なるパラダイムであるため、ICEを考慮せずに、新しい方法を導入する必要があります」(レザ博士)

X1を90%充電するには、約2時間半かかる。フルチャージすれば200km走り続けることができる。レザ博士と同社のチームは、すでに効率性の高いエンジン設計に注目しているが、電動車両を実際に走行させるならば、充電ステーションが手軽に利用できなければならないことは分かり切っている。

そのために、複数の関係者が総力を挙げてよりクリーンな輸送システムを開発しようとしている。たとえば、インドネシアは2030年までに200万台の電気自動車(EV)と1,300万台の電動バイクが公道で利用されるようになると予測されており、これらの車両のために3万1,000の充電ステーションを作ろうとしている。

同様に、シンガポールは国全体に6万カ所の充電ステーションを建設することを目指している。 また、2030年以降は、すべての新しい自動車登録についてもっとクリーンなエネルギーの自動車を要件とすべきとレザ博士は述べる。

また、同社は、よりスマートなバイクを作ることで、電気移動方法の使命をさらに発展させようとしている。レザ博士とチームは、人工知能とデータ分析を組み合わせたX1バイク接続用モバイルアプリを作成した。

このアプリには、ユーザー診断や最寄りの充電ステーションの検索など、カスタマイズされた無数の機能がある。アプリとバイクはシームレスに統合されるため、このイノベーションは長距離移動でバッテリーの節約と効率性向上にも役立つ可能性がある。

レザ博士は「バイクに乗るとき、バイクは移動を快適にする方法と消費すると思われるバッテリーの量を実際に教えることができます」と説明する。

彼とチームは、インシデント検出機能も開発した。このツールは、安全性とメンテナンスをチェックして、バイクのスムーズな走行を確保し、乗り手に気をつけるべきことを教え、交通事故のリスクを最小限に抑えることができる。

X1バイクのデザインと機能は未来的なものだが、レザ博士は、道路を走る電気車両はもはやはかない夢ではないと強調した。かつては空想科学小説の産物であったものを現実のものとし、同社は今、ここで、電気モビリティを実現している。

大切にしているおもちゃの車のコレクションから先駆的な電気車両まで、レザ博士の自動車両に対する情熱は私生活にも仕事にもあふれている。レザ博士は、どこへ行くにも、クリーンで効率的、かつ電化された輸送手段をシンガポールに、そして世界に先駆けて実現するというビジョンをしっかりと持つ。

「バイクがシンガポールで作られているということは、私たちにとって非常に重要です。私は人生の中で、毎日乗り物を見つめてきました。次は電気の乗り物になると思うととてもワクワクします」 レザ博士はこのように話した。

 (2022年04月05日公開)

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