AsianScientist- シンガポール発でオンライン開催されたテクノロジーのマッチングイベントTechInnovation では、多国籍企業や中小企業が「IPHatchセッション」に集まり、有意義なコラボレーションがいかに持続可能で成功するイノベーションにつながるのかを学んだ。
増大する気候変動の脅威に対処するように設計されたエネルギー貯蔵システム、効率的な灌漑方法、グリーン輸送システムなどのソリューションは、廃棄物と汚染を最小限に抑えるには技術とイノベーションが不可欠であることを証明している。
このようなイノベーションは、持続可能な開発と公開実験の文化への道を開く。最先端のコンセプトを開発するためにコラボレーションを行う企業は増えている。オープンイノベーションを利用して資源とアイデアの共有を促進すれば、業界全体で効率性、多様性、収益性の高いビジネス慣行に結びつけることができるかもしれない。
さらに、完璧なパートナーを見つければ、中小企業や新興企業であっても多くの人材にアクセス可能となり、それと同時に経験豊富な企業から指導や専門知識を得ることができる。
IPHatchは中小企業と業界の大企業とのマッチングを専門に行う。最新のIPHatchは2021年9月29日、シンガポール発のマッチングイベントTechInnovationの中で開かれた。シンガポールのIPIが支援するこのプログラムは、新興企業が大企業の研究開発投資を活用し、テクノロジーの可用性とアクセス可能性に見られる格差を埋めることを目的としている。多国籍企業と中小企業の両方の専門家らが、オープンイノベーションを実施して持続可能なソリューションを開発する方法を以下のように披露した。
商業トレンドが変化し、消費者が持続可能な製品やビジネスを好むようになるにつれて、企業は廃棄物を削減し、プロセス改善テクノロジーに投資するようになってきている。 コンチネンタル・オートモティブ・シンガポールのイノベーションテクノロジー・マネージャーであるアドリアン・レオナルディ(Adrian Leonardi) 氏は、大きな変化は恐怖心を抱かせるように見えるかもしれないが、世界をより良い方向に変えながら、企業が高い利益を得る機会を提供してくれると説明した。
「持続可能性は現在、イノベーションの主要な推進力であり、この傾向は今後5年から10年でさらに強くなると思います。持続可能な製品やプロセスを開発することの社会的利益と、開発の経済的コストのどちらかを選択する必要はありません」とレオナルディ氏。
さらにビジネスリーダーは、イノベーションへの投資に関して、社会的影響と利益の両方を強調するアプローチを取っている。
Click Venturesのインパクトパートナーであるジェニ・リスク (Jenni Risku) 氏によると、迅速なイノベーションを促進させる資本があれば、企業は持続可能な方法に素早く適応することができ、長期的には多くを節約でき、理想的である。
彼女は「新興企業が利用できる資本も増えています。これは、創業者や、例えば、中核的技術企業であると同時に世界に貢献したいと考えている2つの方向性を持つ企業を対象としています」と話した。
献身的なリーダーシップに加えて、スタッフを効率的に管理することは、持続可能性を持つイノベーションを促進し推進する上でも不可欠である。企業は、若い世代の使命感や技術に精通した性質を認識することで、それを実現することができる。
IPHatchのパネルディスカッションの参加者は、トレーニングを通じて潜在的な才能を形成すれば、従業員がその能力を発揮し、世界最大の問題の一部解決が可能であり、それと同時に会社は金銭的な利益を得るということに意見の一致を見せた。
人材もさることながら、消費者行動がビジネスの展望を形成し、決定することは言うまでもない。また、顧客のニーズを敏捷かつ偏見なく評価し、対応する能力も、イノベーションを推進する上で重要な鍵となる。
市場の変化に伴い、企業は消費者の新しい嗜好に対応する必要があるが、オープンイノベーションはこうした変化に対応し、競争力を維持するための非常に有効な手段であることに変わりはない。
パナソニックファクトリーソリューションズ・アジアパシフィックのマネージャーであるロー・ムン・ジ (Low Mun Ji) 博士は、「持続可能な技術を進化させ、他の分野にも拡大できることが重要な基準です」と力を込めた。ロー博士の意見に賛同して、レオナルディ氏は共通の目標を達成するためには、関係者全員の哲学を一致させることも重要であると付け加えた。
知的財産投資銀行であるピースフューチャーの地域ビジネス開発を担当するクレア・リム(Claire Lim) 氏の司会で行われたテーマ別セッションの炉端会議では、2つの新興企業が、社内外からアイデアを吸収することは、新しいコンセプトを策定し、最終的なソリューションを考案する触媒となると述べた。
オープンイノベーションを促進することで、企業はリスクを最小限に抑え、課題に対して費用対効果の高いソリューションを開発することができる。また、イノベーションを業界のエコシステムと連携させ、知的財産の共創の機会を多く創出できるパートナーシップの拡大にもつながる。
このような取り組みは、環境に優しい水素飛行機を製造する航空新興企業のシープレーン香港や、シンガポールの新興企業であり革新的なフィンテックや規制技術を通じて中小企業や投資家が環境・社会・政策の要求に応えられるよう支援するトリニティエコなどに大きな恩恵を与えている。
シープレーン香港の創設者であるスティーブン・チェウング (Steven Cheung) 氏は、「IPHatchによって取得した特許によって、当社の既存のプロジェクトは多くの信頼を得ることができました。研究開発に必要な時間とコストを大幅に削減することができました。」と語った。
トリニティエコの創業者であるマイケル・イーン (Michael Yiin) 氏は、IPHatchのオープンイノベーションのアプローチにより、投資家からの関心が高まり、顧客の機密データを保護するサイバーセキュリティ能力が強化されたと指摘した。
多国籍企業や中小企業は、IPHatchのようなイベントを利用すれば、プレゼンテーションや売り込みを含むすべての段階において、支援を受けつつ技術を高める開発に協力することができる。最終的には、このようなコラボレーションによって、新興企業の前向きなソリューションがうまく拡大し、現実の持続可能性の問題を解決するために利用できるようになる。
(2022年04月06日公開)