特殊なオスを野外に放ち繁殖―デング熱が減少 シンガポールでプロジェクト「ボルバキア」

AsianScientist - 公衆衛生のトップであるリー・チン・グ (Lee Ching Ng) 准教授は、シンガポールのプロジェクト「ボルバキア」(Wolbachia)について、デング熱の感染拡大を食い止めるために、デング熱の原因となる生物と同じ種を利用していると説明する。

集団に新たな個体を加えて数を減少させるという考えは、ピンと来ないかもしれない。しかし、シンガポールでデング熱を媒介する蚊の問題に関しては、それは驚くほど効果的な解決策かもしれない。

シンガポールの国家環境庁 (NEA) は2016年以来、「プロジェクトボルバキア」と呼ばれるプログラムの下で、虫を運ぶという特殊な数種類の虫を使い既存のデング熱対策を補完する方法について調査している。

当然のことながら、NEAが国内の高層ビル街で放つネッタイシマカ (Aedes aegypti) は、普通の集団ではない。まず、それらの蚊はすべてオスである。つまり、刺すことはない。さらに、それらはデング熱ウイルスを保有していない。そしてユニークなことに、それらは皆、ボルバキアと呼ばれるバクテリアを体内に保有するために飼育されている。

これらのオスの蚊が野外でメスと繁殖すると、このバクテリアは卵に受け継がれ、孵化(ふか)を完全に防ぐ。

リー・チン・グ准教授は今までの野外試験から、地元のネッタイシマカの個体数は、一部の住宅地では最大98%まで急減する可能性を示し、同時に地元のデング熱の症例も急減できるかもしれないとし、プロジェクトボルバキアについて次のように解説した。

「この種の試験としては、世界で初めて高層ビルで実施されました。プロジェクトが拡大するにつれて、さまざまな地形と場所からさまざまな標本値群と教訓が得られ、スケールアップが可能になりました」

同准教授はNEAの環境衛生研究所のグループディレクターであり、プロジェクトボルバキアに参加している。

プロジェクトの有望な結果に基づいてNEAは2022年6月、野外試験をシンガポールの他の8つの場所でも行うと発表した。試験には住宅開発庁 (HDB) が供給する1400のブロックが新たに範囲に含まれ、HDBが提供する国内の全住宅の31%がプロジェクトボルバキアの対象となる。

(2022年08月18日公開)

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