【AsianScientist】ケールを使った世界初のプレバイオティクス開発→アジア人の消化器系の健康改善へ

使われなかったケールの茎から作った粉末が、アジア人の消化器系の健康を改善するのに役立つかもしれない。

シンガポール工科大学 (SIT) と東南アジア初の精密腸内微生物叢企業である AMILI が協力して、これまで使われなかったケールの茎を最適化し、アジア人専用のプレバイオティクスを作成した。この種のものとしては初のプロジェクトである。

腸内微生物叢は、何兆ものバクテリア、酵母、真菌、およびウイルスから成り立つにぎやかなコミュニティであり、肥満や糖尿病などの病気を管理する免疫系の能力の中心でもある。西洋人とアジア人の食事パターンの違いにより、アジア人は一般的に腸内微生物叢 (乳糖、動物性脂肪、動物性タンパク質の消化に重要なプロバイオティクス)に含まれるビフィズス菌とバクテロイデス属が少ないことが分かっている。

AMILI の企業開発担当副社長であるグウェンドリン・タン (Gwendoline Tan) 博士は 「西欧諸国の人々と比較して、アジアに住む人々は一般的に炭水化物の消費が多く乳製品は少なく、加工食品の消費もある程度少なくなっています」と説明する。一方、「西洋の食事は総脂肪、動物性脂肪、精製糖が豊富です。 このような食事パターンの違いは、人々の腸内微生物叢に大きな影響を与えます」と言う。

SIT と AMILI の研究者は、粉末化されたケールの茎が、これら 2 種類のプロバイオティクスの成長を促進する強力な触媒であるだけでなく、1 日に必要な水溶性繊維および不溶性繊維の摂取量を補うことができることを発見した。

SITの共同主任研究員のチェオウ・ウィーンシン (Cheow Wean Sin)准教授(左)とAMILI の企業開発担当副社長のグウェンドリン・タン (Gwendoline Tan) 博士

「プレバイオティクスは、腸内の「善玉」細菌に栄養を与える食物繊維の一種です。これは、健康な腸内微生物叢を促進する鍵となる重要な栄養素です」

SIT の食品・化学・バイオテクノロジー部門の共同主任研究員であるチェオウ・ウィーンシン (Cheow Wean Sin) 准教授はこのように説明する。

彼女は、研究プログラムの主任研究員であるジョイ・パン (Joy Pang) 准教授とコラボレーションを行った。パン准教授と彼女のチームは試験管内(in vitro) 実験で、ケールの茎がプロバイオティクスの成長を促進することを検証した。

研究者たちは、最高品質のプレバイオティクスを得るために、さまざまなプロセスや段階でさまざまな乾燥方法、粉砕プロセス、パラメーターを最適化し、さまざまな結果を得た。ウィーンシン准教授とパン准教授の間では、リソースが共有され、ケールの茎の凍結乾燥と粉砕はSIT@Doverで行われ、その後の試験と製品開発はAMILIのラボで繰り返し行われた。

食品廃棄物に新たな命を吹き込む

この応用研究プロジェクトは、使われなかった栽培物野菜が腸内環境の改善に与える効果を利用して、食品廃棄物の価値化(残った食品や副産物を価値の高い製品に変換して、再び食品サプライチェーンに貢献するプロセス)を行う。これは共同プロジェクトであり、ケール、レタス、ほうれん草などといったクリーンで健康的なスーパーフードの生産で知られる同国のアグリテック企業であるSustenir社が、SITの食品サイドストリーム価値化に関する研究を引き継ぐものである。

SITは、人間の腸内健康の研究開発のための重要なプラットフォームとして、ケールの茎をプレバイオティクスとしてさらに開発し、AMILI社の次世代腸内健康サプリメントに配合する予定である。これを支えるのは、AMILI社独自の分析エンジンであるPRIMEから得られるアジア人特有の微生物叢に関する見識である。

8カ月以内に新製品を市場に投入することを目指しており、販売中の西洋のサプリメントに対し競争力を高めていくことであろう。SIT と AMILI社 はケールの茎に関する研究プログラム以外にも、知識交換や多くの産業プロジェクトで協力する予定である。

(2022年09月06日公開)

上へ戻る