バイオテクノロジー企業の MiRXES社 は、いくつかの新しい施設と共同プロジェクトを利用して、シンガポールの早期がんスクリーニングの未来図に貢献しようとしている。
シンガポールを拠点とするバイオテクノロジー企業である MiRXES社 は最近、インダストリー 4.0 (i4.0) 製造施設、2 つの新しい研究所、多施設共同がんスクリーニング研究プロジェクトなど、一連の新しい機能を立ち上げた。新たに開発された機能は、マイクロRNA(miRNA) を利用した疾患検出検査を開発する研究・生産能力を向上させるという MiRXES社 の目標と一致している。
miRNA は、細胞の自然な増殖や死など多くの細胞プロセスを調節する短鎖RNAである。重要な疾患バイオマーカーとして知られるようになってきており、miRNA を利用する診断法の開発は、予防医療の第一歩となる。その一例が胃がんの兆候を検出する MiRXES 社の GASTROClear 血液検査である。
今年はじめ、15,000 平方フィートの広さを持つ新しい製造施設が正式に稼働した。これは東南アジアで最初かつ最大のインダストリー 4.0 の生体外実験施設である。この施設は「任意の組み合わせ、任意の量」の原則に従って自動化とデジタル化の両方を組み合わせ、製品品質のモニタリングを行い、製造プロセスを改善する。
MiRXES 社にとってISO13485 に準拠した最初のものとなる生体外診断用製造施設と合わせてれば、新しい施設は MiRXES社 の全生産能力を強化する。製造プロセスの効率と持続可能性を保ちつつ、現在の生産高の3 倍量を生産できる。
MiRXES社の共同設立者でありCEOであるゾウ・リーハン (Zhou Lihan) 博士は、施設開始時に「この施設はこの種のものとして東南アジア初のものであり、わが社は医療分野の次の大きな課題に対応するために備えています」と述べた。
アジアが新しいバイオテクノロジー市場として台頭する中、この製造施設はこの地域の発展の原動力となり、JHL バイオテクノロジー・ バイオシミラー製造施設(中国の武漢に所在し約 26,000 平方フィートの広さを持つ)のような役目を果たすであろう。
アジアにおけるがんの蔓延に対処すべく、MiRXES社はmiRNAの力を活用して、がんの早期スクリーニングが可能な診断検査の開発に引き続き力を注いでいる。理想的には、早期発見による疾病管理の改善に役立てようとしている。
診断検査の開発を支援するために、MiRXES社は バイオポリスの 2 つの新しい研究所(MiRXES 研究所と M 診断 研究所)の稼働を開始した。MiRXES 研究所は i4.0 製造施設と協力して、miRNA 研究の最大処理量を促進する。一方、M 診断研究所は検査検証用の臨床参照を提供する。
2つの研究所は、MiRXES 社が予定している別の開発であるプロジェクトCADENCE にも協力する。このプロジェクトは医療提供者や高等教育機関と提携して、複数のがんに関する新しい血液検査を開発する。プロジェクトに関する発表は、Healthier SG プログラムに基づくシンガポールの予防医療に向けた活動として、2022 年 7 月 7 日に行われた。
ゾウ博士によると、がんの血液検査を開発することは容易ではない。それは、患者が不規則な miRNA プロファイルを示す可能性があるためである。このため、特定の miRNA プロファイルを識別し特定の種類のがんとの関係を決定することは難しい。
現在の研究からは、異なる miRNA プロファイルが分かっているのは肺がん、乳がん、結腸直腸がん、卵巣がんなどごく少数の種類のがんだけである。さらに、初期段階の臨床試験は再現性がないため、スクリーニング テストの開発が困難になっている。MiRXES 社は今後の課題を考慮しつつ、新しい機能を引き続き活用して、がんの早期発見におけるイノベーションを推進していく。
シンガポールのオン・イエクン (Ong Ye Kung) 保健相はプロジェクト CADENCE の立ち上げで、「早期発見は、すべての患者の健康に大きな違いをもたらします。 この技術により、私たちの医療システムは、病院やコミュニティの中で、治療的ケアから予防的ケアへと決定的に移行することができます」と力強く述べた。
(2022年09月13日公開)