【AsianScientist】気候変動・食料不足に対応―ラオスの農家のための気象ウェブサイト開発

研究者らはラオス政府と提携して、気象ウェブサイトを開発した。これは農家が気候変動に対応し、食料不足との戦いにおいて役に立つ。

気候リスク管理システムを開発する「DeRISK 東南アジア」プロジェクトの研究チームは、食糧農業機関と提携してLaCSA(ラオス農業気候サービス)と呼ばれるICTを使う農業気象学プラットフォームを開発し、導入した。

このプラットフォームは、ラオス気象水文局の数値気象予測システムとして機能する。LaCSAは、過去7日間の気象観測、72時間前と7日前の詳細な予報、そして気温と降水量に関する3~6カ月の季節予報を行う。

DeRISKのチームはLaCSAを使用し、特に農業当局と気象当局の間に見られる長年の機関間調整の問題を解決し、農家の農業改善に役立つよう高度な気象監視サービスを農家に提供することを目指している。今日まで、ラオスの11万を超える農家がLaCSAを使用してきた。研究者たちは、この数字を見て、悪化を続ける気候変動の影響から脆弱な農業部門を保護し、さらに広くは、東南アジアの国々の食料安全保障の確保に役立つと期待している。

研究チームはまず、さまざまな部門の役割と責任について詳しく知るために、アクセス可能な政府報告書のデータを調査した。また、気候サービスデータの利用可能性およびアクセス可能性、ならびにラオスの農業気象学サービスを作り上げる機関間の取り決めについても調査した。気候サービスの共同開発に関する機関間の障壁を調査したことは重要なことであった。その調査のために、チームはLaCSAの立ち上げ前と立ち上げ後に、高レベルの行政官や政府機関の職員との話し合いも行った(立ち上げ前の話し合いはプラットフォームをニーズに合わせてプラットフォームを調整することを、立ち上げ後の話し合いは共同作成プロセスの影響を確認することを目的としていた)。立ち上げが完了し、さまざまな利害関係者の間で能力開発セッションが行われた後、チームは、LaCSAがラオスの農業部門と気象部門の間に必要な双方向のつながりを確立したことに気がついた。このつながりは、最終的に農家と地域社会に利益をもたらしている。

DeRISKのラオス国家コーディネーターであり、論文の共著者であるレオ・クリス・パラオ (Leo Kris Palao) 氏によると、ICTプラットフォームは調整を改善した。彼は、政府機関や関係者はICTプラットフォームを使うことで、情報サプライチェーンの調整や、農業に関する推奨事項の更新を定期的かつ効果的に行えるようになると述べた。

インターネットにアクセスできる農家は、これらの連絡をLaCSAから直接受け取ることができるが、そうでない農家は、村の拡声器、ラジオ、屋外研修、テレビ、ポスターで知ることができる。アジアにおける最近の開発成果は気候変動により覆えされる恐れがある中、この結果から、同じようなトップダウン式のICTアプローチを他の途上国にも適用すればよいのではないかという期待が生み出される。

チームは、その期待を実現させるためには、いくつかの重要な教訓があったと指摘している。教訓の一つとして、組織間の協力を確保するためには、政策立案者の早期の賛同が不可欠であり重要であることが挙げられる。次に挙げられるのは定期的な共同トレーニングを行う重要性である。これにより、気象分野と農業分野のリーダーやスタッフは、知識や能力を高めるだけでなく、自身の専門知識を共創プロセスで提供することができる。

チームはスタッフの時間と予算を考慮した、使いやすいデータ管理プロセスと標準的な操作手順の重要性についても指摘している。これにより円滑なコミュニケーションとプロジェクトの持続可能性が確保できる。

パラオ氏とDeRISKのチームは、これらの教訓を拡張性を持つ気候サービスプラットフォームの開発に利用すれば、アジアの気候変動復元力を促進することができると考える。

「分野間の取り決め、ボトムアップのアプローチ、包括的な普及戦略は、提携の中で学んだ重要な教訓の一部です。これらは包括的であり、適切であり、かつ透明性を持つ気候サービスシステムの開発に活用できます」とパラオ氏は話している。

(2022年11月01日公開)

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