【AsianScientist】持続可能な食品の生産・消費で人間と地球双方の健全な未来構築

ベトナムで行われた調査から、持続可能な食品の生産と消費を支援することが、人間と環境双方の健康を改善する道を開くのに役立つことが分かった。

2015年は海面上昇と極度の熱波が続く中で、国連加盟国がパリ協定(地球温暖化対策の国際枠組み)に署名した重要な年であった。この取り組みにより、国際社会は炭素排出量を削減し、地球温暖化による気温上昇を産業革命以前から2℃未満に抑えることを目標とした。

日常生活の中では2度の温度差はごくわずかの違いに思えるかもしれないが、地球規模では大きな違いとなる。上昇をわずか 1.5℃に抑えるだけでも、深刻な干ばつにさらされる人々は 6,100万人減り、最大で2億7,000万人の人々が水不足の問題から救われる。温暖化の影響は農業や漁業に従事する人々の生計を脅かし、経済問題、さらに重要なことに、食糧不安も引き起こすかもしれない。

食料分野は気候変動対策と深く結びついているため、持続可能性の高い食品の調達、生産、流通システムの必要性が注目される。事実、持続可能な食料システムには、気候変動を緩和し、永続的な食料安全保障を支える力がある。我々の社会の食品消費方法や、その選択の影響についてよく理解すれば、食料システムを変革し、改善することができる。

消費から気候まで

きれいに区画された水田の周りには家屋敷が点在し、そこには果樹があり、丸々と太った家畜がいる。これは、我々の社会の根元を支える産業の、牧歌的な風景である。しかし、食品農業産業は人々に食料を供給するだけでなく、世界の温室効果ガス排出量の約 37%についても関係しているのである。他の排出源の中でも、特に牛は消化過程でメタンガスを生成する。一方、亜酸化窒素は肥料に使用され、放出される。

様々な分野が協力し合い、世界中の数十億の人々のために、温室効果ガスの排出を悪化させずに食料を栽培する方法を見出そうとしている。当然のことながら、食料システムは第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で議論の重要なポイントとなり、農業イノベーション変革に関する世界的な行動計画につながった。この戦略は、排出量が低く気候変動に強いシステムを構築して食料需要を満たすことを目的として、農業研究とイノベーションへの投資に焦点を当てている。

この問題は、2021年の国連食料システムサミットでも取り上げられた。このサミットでは加盟国が集まり、食料環境目標の再調整、および持続可能性の高い生産、消費、そして特にCOVID-19パンデミック後の復元力が強く求められた。

しかし、世界の指導者や関係者は、食料システムの中で持続可能性がどのような意味を持つかについて完全な合意に達する必要がある。そのため、解決策を考える際には、有効なものを特定するための基準も必要である。それを目的として、国際生物多様性同盟と国際熱帯農業センター (CIAT) が実施したベトナム北部の食品消費パターンに関する調査は詳しいことを教えてくれるかもしれない。

この調査の全体像は、食料の入手可能性、手頃な価格、アクセス性、受容性を含む食料環境について調べることだった。食事と栄養状態、消費者行動、食品サプライチェーンの流れを特定することで、研究者は各コミュニティの食品環境をより明確に把握しようとした。

アクセスの革新

平らな地形に肥沃な土壌、そして涼しい気候という理想的な農業条件を備え、高原に位置するモクチャウ県の農村地区では、地元の農産物を主に食べている。しかし、経済的背景などのさまざまな要因により、健康的で持続可能な食料生産の採用が難しい場合がある。たとえば、この調査では、この地域では誰でも米と野菜を買うことができるが、地元住民のうち65.4%もの人々が、肉は高すぎて定期的に購入できないと考えている。

消費パターンを詳しく知ることで、地域社会は持続可能な食料システムを改善し、食料安全と環境の健康を強力なものにすることができる

消費者の家庭が伝統的な市場からかなり離れていれば、それは食品へのアクセスに対する障壁の1つである。この地区の人口の半分以上を占めている少数民族グループは、気候変動の影響ならびにそれに伴う農業ストレスおよび食糧不安に対して特に脆弱である。

一方、ドンアイン区では食料システムと技術革新が絡み合い、自治体は農業再編計画を立ち上げると同時にスマートシティへの投資を推進している。コンビニエンスストアができたためポテトチップスやソーダなどといった不健康な食品の消費が増加しているが、ここの都市部周辺地区で消費される食品の約40%は地元で生産されている。

これは、ドンアイン区が紅河デルタという好立地に位置することも一因である。紅河デルタでは肥沃な土壌が急流の川に面しているため、灌漑や農業に有利である。広大な土地は、さまざまな生産品や農産物に特化した区画に分けることができるので、うまく使うことができる。多くの農業技術が導入されたためスマート農業が行われるようになり、生産効率と食料供給の向上に役立っている。流通と移動については、この地域は輸送インフラも強化され、現在では食品サプライチェーンに沿った誠実性を促進するトレーサビリティ・システムを採用している。

イノベーションを食料システムに統合することで、地域社会全体の生産と消費のパターンを、高価値を持ちつつ持続可能な食料システムに向かわせることができる。

適切なバランスを見つける

技術革新以外に目を向けてみよう。調査対象となった地方、都市近郊、および都市部の消費者は、健康的で安全な食品に対する高い嗜好を示している。これは、おそらく持続可能性ロードマップにおける重要な指標である。

健康は地域社会の中での最優先事項として認識されているが、食事パターンは別の話となる。都市部のカウザイ区とドンアイン区の人々は依然として大量の肉を消費していたが、モクチャク県の多くの家庭は必ずしも栄養要件を満たしてはいなかった。

このような問題に対処するには、食の安全性に配慮し、輸送システムを改善し、インフラに投資すればよい。すると気候変動への回復力を作り上げ、人間の健康の向上に向けた波及効果を生み出すことができる。安全な食品を消費することは、健康維持の本質的な部分である。トレーサビリティ・システムなどといったインフラの開発は、環境の持続可能性だけでなく、人間の幸福にとっても効果的なソリューションとなり得る。

物理的な距離やコストなどといったアクセスに関する障壁を減らすことだけでなく、栄養に関する教育キャンペーンなどのイニシアチブも、健康向上と持続可能性を促進するために欠かせない。食品と人間と地球のつながりに関する深い理解を促進することは特に重要である。消費者の需要がバリューチェーンを動かし、関係者の決定、資源の投資、および行動計画に影響を与えることができる。

好例:

モクチャウ県の自治体は、都市市場からの需要が高まる中、高価値作物の開発への投資を増やした。ドンアイン区では、農業は家族産業であり、多くの世帯が食料生産業に携わっている。このような小規模農家に対し継続的に投資と支援が行われており、地区の食料供給と経済機会の基盤となっている。これはインドネシアやカンボジアなどの他の東南アジア諸国の成功とよく似ている。このように小規模生産者と強く関わることで、食料生産増加の大きな可能性が示され、地域社会の栄養ニーズを満たしつつ持続可能性の向上に貢献できる。

責任ある食料生産を奨励することにより、持続可能な食料サプライチェーンは、健康な食品を最も必要とする人々を食品へのアクセス可能にし、より信頼性と回復力のあるシステムを確立することができ、最終的に人類と地球の健康に変化をもたらすことができる。

我々が今日食べるものは、明日の地球の運命を変えることができる。食生活のパターンを変え、持続可能な食生活を支えることで、誰もが環境への影響を減らしながら、すべての人を養うことができる食料システムの構築に参加できる。

(2022年11月15日公開)