シンガポールが初の世界トップ10入り、クラリベイト「高被引用度著者2022」

2022年12月26日 アジア・太平洋総合研究センターフェロー 斎藤 至

世界的な学術情報分析企業であるクラリベイト・アナリティクス(以下クラリベイト社)の「高被引用度研究者」2022年版(11月15日公表)で、シンガポールが国・地域別で初めて世界のトップ10に入った。

高被引用論文著者(Highly Cited Researcher)とは、過去10年以上にわたり、その専門分野または研究領域において、著しい影響を与えた研究者としてクラリベイト社が選出する。本年は研究公正を担保するため、例年に増して定性的分析を強化したとしている。

今年は、特定の分野で3,981名、および分野横断で3,244名、合計7,225人の研究者が選定された。これは実質的に世界の69国・地域から6,938名の個人を認定している 1。国・地域別比率のトップ3は米国(38.3%)、中国(16.2%)、英国(8%)となっており、シンガポールからは106名が選出され、10位にランクされた。

クラリベイト社公開の高被引用度著者データから少し詳しく見てみよう。まず分野別の内訳を、世界に占める割合の高い順に並べると、コンピュータ科学、材料科学、化学、物理学となっている(下の表)。

シンガポールの研究者数内訳:分野別
クラリベイト社公開データより筆者作成

また、所属機関別(著者が指定する第1所属機関)の内訳は、シンガポールの南洋理工大学が44名で最多である(下の図)。これは世界20位、これはアジア・太平洋地域では、豪クイーンズランド大学(45名)に次いで2位になる。(なお参考に、日本は東京大学が9名で183位、京都大学が8名で221位である。)

シンガポールの研究者数内訳:所属機関別
クラリベイト社公開データより筆者作成

シンガポールは本年のトップ10入りを果たす以前も、堅調に高被引用度研究者を増やす傾向にあった。過去2カ年に遡ると、2021年には91名、2020年には82名が選ばれていた。被引用度は学術論文の質(注目度)を表す指標と考えられているため、高い被引用度の学術論文を発表する著者がシンガポールで増加している事実は、当該国の科学研究に学界からの注目が高まっている傾向、または学界で注目度の高い研究者が当該国に集まっている傾向を意味すると考えられる。シンガポールは21世紀初頭に世界トップの生命科学研究者を誘致する「バイオポリス」を設置し、その後もトップ研究者誘致を継続的に進めてきた。今回、その成果の一端が学術論文への注目として表れつつあると言えよう。

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