アジアの新鋭科学者たち:私たちの銀河系の 130 億年の歴史に魅了されたフィリピンのアンドレア・キャリル博士研究員(Dr Andreia Carrill)は、銀河系を理解するために星を化石として使用し、フィリピンの天体物理学者コミュニティの成長を促している。
アンドレア・キャリル博士研究員
フィリピンのマニラ北にあるバリワグ(Baliuag)は、lechon manok(ロースト チキン)、chicharon(豚バラ肉のフライ)、そしてうまくいけば銀河考古学の第一線の科学者となる天体物理学者、キャリル氏の3つが代名詞となっている町である。比較的新しい分野である銀河考古学は、天の川銀河がどのように形成されたかを理解するために、星とその年齢、位置、化学組成を研究するものである。
ダラム大学の計算宇宙学研究所(Institute for Computational Cosmology)の博士研究員であるキャリル氏は、自身の天体物理学研究で故郷のバリワグを有名にした。彼女は、天の川銀河の 130 億年の歴史をつなぎ合わせるために、星を化石として研究している。
キャリル氏はいずれも技術者の両親のもとに生まれ、科学文献を読んで育った。彼女は常に自分自身を科学者であると考えていたが、最終的にどのような科学者になりたいかを決めるまでに何度か違う道に進んだこともあった。最終的に、彼女を天体物理学の道へと導いたのは、米航空宇宙局(NASA)のシャトルモデル、ポケット百科事典、そして「アインシュタインの正しさを証明したフィリピン人」として知られるレイナベル・レイエス(Reinabelle Reyes)に関するニュースであった。「アジアの新鋭科学者たち」特集では、キャリル氏が Asian Scientist Magazine に、銀河の考古学、星の形成、フィリピンの天体物理学者のコミュニティの構築、そして彼女が星を愛する理由について語った。
星からたくさんのことが分かることが大好きです。星を形成するガスは、その周りの惑星も形成するからです。星は、銀河系外の星系、惑星、星の種族、そしてそれらの歴史について学ぶのに役立ちます。星を見るだけで、天文学の広範な分野とつながることがたくさんできます。また、新しいより詳細な情報が得られる新型の望遠鏡や調査も非常に多くあるため、天体物理学者にとって非常に胸が躍る時代でもあります。たとえば、衛星ガイアによって、天の川銀河の 18 億個の星が非常に正確にマッピングされています。また、先に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、この分野全体を革命的に変化させています。今は、このビッグデータ天文学の時代でもあります。これはすべて公開データであるため、誰でもその情報を使用できます。情報にアクセスするために豪華な設備は必要はありません。必要なのは、インターネット、優れたコンピューティングリソース、優れたアイデア、そしてあなたを導く良き指導者だけです。
私は物理も本当に好きです。方程式から物理的な世界を解明していくことには、美しく、非常に詩的なものがあります。
私は銀河の形成を研究しており、さまざまな銀河の観測とシミュレーションを組み合わせて研究に取り組んでいます。天文学では、ほとんどのデータは観測から得られたものです。これは、従属変数と独立変数を使用した典型的な科学実験とは異なります。私たちにはそれができません。ですが、私たちは観測的研究から多くのことを学ぶことができます。私は、天の川銀河の形成における銀河の共食い(galactic cannibalism)の役割に重点的に取り組んでいます。簡単に言えば、これは天の川のような銀河が小さな銀河を飲み込んで形成されていることを意味しています。私たちは小さな銀河が天の川銀河の形成前に存在していたと考えています。ただし、2018 年にガイアが打ち上げられるまでは、星からこのような銀河の多くの手がかりを見つけることはできていませんでした。小さな銀河自体は1,000 億年前に食べ尽くされて、とっくになくなっていますが、残っている星の化学的性質とそれらが移動している方向に基づいて、銀河の共食いについて多くのことを学ぶことができます。ですから、私はそのような飲み込まれた星の特性を研究しています。また、多くのシミュレーション研究も行っており、それが私たちが天文学で「実験」する方法となっています。私は大規模な宇宙論的シミュレーションを使用して、天の川のような銀河を見つけ、天の川のような銀河の特性を私たち自身の銀河と比較しようとしています。
私たちが行っていることの多くは協力を通じて行われているため、私はフィリピンの人々を大きな天文学の世界につなげることに強い関心があります。皆さんを適切なメンター(指導者)につなげることができれば、コミュニティと私たちが行っている科学を成長させるために多くのことができるようになります。メンタリングは私にもたくさんの充足感を与えてくれます。それは、私の生徒が本当に興味深いことを考えてそれをコード化したり、私が思いもよらなかったような非常に良い質問を生徒から受けたり、私が思いもよらなかった方法で生徒が問題を解決したりしたときに感じる、私が論文を完成させたりコードを書いたりするときとは異なる種類の充足感です。彼らと一緒に研究をしていると、誇りとインスピレーションをとてもたくさん感じます。かなり平凡な日もありますが、彼らはとても活力に満ち溢れていて、私が行っていることは本当に素晴らしいということを思い起こさせてくれます。
私が2012年に天体物理学を学び始めたとき、この分野で私が尊敬したり一緒に成長したりできるフィリピン人はほとんどいませんでした。ですが、レイナベル・レイエスがいました。私は今でもアインシュタインが正しいことを証明したフィリピン人を含め、彼女に関するすべてのニュースの見出しを覚えています。私は彼女が高校の先輩であったことを知り、彼女が男性優位の分野で研究しているフィリピン人の私に似ていることに気付きました。彼女のようなロールモデルを持つことで、これが私が追求できるものであることを知りました。近年、コミュニティがどれだけ成長したかという点では、ビッグバン(big bang)になっています。どれだけの人たちがTwitterで積極的につながっているか見てみてください。これはすごいことだと思います。もちろん、決して十分ではありません。ですが、キャリアにおいて私よりも先に進んでいる人だけでなく、私と同じ旅の段階にいる人たちと出会うのは本当に素晴らしいことです。私と同じように、そして同じバックグラウンドを持つ人々と同じ旅で出会うのは素晴らしいことです。
できないことは何もありません。ですから、特に科学や天体物理学があなたを幸せにするものである場合、それを追求することはできないと言わないでください。志を同じくする人々に接触することも良いことです。私は若い頃に支えてくれた先生や先輩がいて、とても幸運でした。誰もがそういう人を見つけられるとは限らないこともわかっています。ですから、そのような人があなたの周りにいない場合は、探してください。そのような人は存在し、喜んであなたを助けてくれるでしょう。天体物理学があなたの夢なら、私が力になります。
(2023年01月25日公開)