シンガポール-日本ファストトラック・ピッチイベント 日・ASEANの友好協力50周年を記念

2023年3月24日 JSTシンガポール事務所 馮偉誠(Max Fong)

ファストトラック・ピッチとは日本貿易振興機構(ジェトロ)が、日本、シンガポール両国の政府系機関との共催で、世界が抱えている課題(チャレンジ)を解決するため、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)のスタートアップのアイデアを募集するイベントである。各課題(チャレンジ)はグローバル企業が指定したもので、選ばれたスタートアップはその課題の持ち主(チャレンジオーナー)の企業との協業ができ、日本とASEANの政府系機関による支援機会が得られる。

日・ASEAN 50周年記念イベントの1つとして

日本とASEAN(東南アジア諸国連合)の友好協力は今年で50周年を迎える。この親密な関係は日本とASEAN が1973年からアジア太平洋地域の平和や発展のためには様々な事業に取り組みながら、50年にわたり築いてきたものだ。この第1回ファストトラック・ピッチは日・ASEANの友好協力50周年を記念するイベントの1つであり、技術のアイデアを通して日本とASEAN双方のスタートアップと大企業の連携を促進する。

ファストトラック・ピッチのチャレンジには以下のようなものがある。

高齢者の身体機能や食生活を改善・支援するチャレンジ
チャレンジオーナー:パナソニック

日本だけではなく、シンガポールやタイなどASEAN諸国の中でも急速な高齢化の社会問題を抱えている国があり、そのような国では歩行や食事、視覚、聴覚などで不便を感じている高齢者がますます増えている。高齢者がより楽に日常生活を送れるようにするためにパナソニックはチャレンジオーナーとして生活面で高齢者を支援する先進的な提案を募集している。選ばれたスタートアップは高齢者介護事業において20年以上の実績を誇るパナソニックとの協業やマーケティングの支援機会が得られる。

植物由来の代替肉の味、食感や色を改善するチャレンジ
チャレンジオーナー:Roquette

近年、代替肉の需要は徐々に高まってきている。しかし、多くの消費者は本物の肉の味、食感や色にこだわり、現在の代替肉に満足していない。これを背景に、植物由来原料の世界的リーダーで植物性タンパクのパイオニアであるRoquetteはチャレンジオーナーとして、植物由来の代替肉を改善する技術的提案を募集している。選ばれたスタートアップは支援金をもらい、シンガポールでRoquetteの施設で協業して研究開発を行う機会が得られる。

AI・自然言語処理を用いるデジタル・アシスタントを構築するチャレンジ
チャレンジオーナー:ファイザー

ヘルスケア・製薬業界では常に大量の複雑な書類が扱われているが、そのために多くの労働者と時間が必要となっている。この問題を解決するために、製薬会社世界ランキング1位のファイザーは、人工知能(AI)または自然言語処理を用いて書類に関する問題を素早く回答し、原典参照ができるデジタル・アシスタントを構築するというチャレンジを出している。選ばれたスタートアップはファイザーのチームの専門家と共同開発を行い、テスト的に販売することもできる。

この3つのチャレンジを含めて、今年の第1回のファストラック・ピッチでは全部でグローバル企業8社による15チャレンジの解決策を募集している。大半の人は、日・ASEANの関係といえば、政治、安全保障、経済協力といったイメージが思い浮かぶかもしれないが、他方で技術の交換や開発を通して共同で世界の問題を解決することも友好協力関係を保つに大切なことだと考えられる。

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