イノベーションを中心に据えたシンガポールの包装会社は、プラスチックのない未来を先導する上で重要な役割を果たしている。(2023年4月14日公開)
スマートフォンのケースから包装紙、フェイスマスクに至るまで、プラスチックは私たちの日常生活に欠かすことのできないものになっている。しかし、プラスチックの魅力的な特徴である耐久性は、廃棄やリサイクルする際に困難を引き起こす。
数値データは驚くべきものである。世界のプラスチック廃棄物の発生量は、2000 年から2019年にかけて2倍以上の3億5,300万トンになったが、そのうちリサイクルされたものはわずか9%にすぎない。その山のような廃棄物のうち約40%はプラスチック製のフィルムや容器などの包装材料(一度使用されてから廃棄されたもの)であった。
世界中でイノベーションの最前線に立つ企業は、持続可能性を高めるために製品を再設計し、使い捨てプラスチックから再利用可能なプラスチック製品に移行するためにビジネスモデルを変革している。これに関して、革新的で環境に優しい代替パッケージでプラスチック廃棄物の問題を解決する方法でリードしているシンガポールの3つの企業に焦点を当てていく。
使い捨てのプラスチック包装の大部分は、リサイクルが困難で費用がかかる。従来の包装は通常、内容物を保護するために、リサイクルが複雑になるさまざまな素材からなる薄い層でできている。それに加え、ほとんどの包装が食品を十分に新鮮に保てるものではない。
一石二鳥を企てているAegis Packagingは、複数の利害関係者と協力してこれらの課題に取り組んでいる。同社は、酸素と湿気がパッケージに入り込むのを効果的に防ぎ、食品を長期間新鮮に保つことができる新しいコーティングを開発した。そのため、パッケージの製造に必要なプラスチックは1種類だけで済み、リサイクルが容易になっている。
Aegis PackagingのビジネスデベロッパーであるOng Kai Liang氏は「イノベーションは常に、Aegis Packagingの中心にある。当社の社内研究開発チームは、急速に変化する消費財産業向けに新しい包装製品を絶えず作り出している。地元の研究機関と協力して、技術的ノウハウを強化している」と話す。
Aegis Packagingはすでに、廃棄物の削減を目的とした2つの手法を用いて、ドライフード業界でそのイノベーションを活用しており、そのコーティングの利点を医療やパーソナルケア製品にまで拡大することを目指している。
プラスチックのリサイクル性を改善するだけでなく、最初に使用するプラスチックを減らすことがもう1つの解決策である。しかし、プラスチックの特性に匹敵する代替品を探すのは困難である。
この課題に取り組むAlterpacksは、埋め立て地に捨てられるであろう食品廃棄物を、使い捨てプラスチックの代わりになる製品に変えることに成功した。Alterpacksは、ビール醸造業界の廃棄副産物である醸造粕を再利用可能で生分解可能な食品容器に変えることにより、食品廃棄物とプラスチック汚染の両方の拡大する問題に対処している。
Alterpacksの創設者兼最高経営責任者であるKaren Cheah氏は「私たちは当初から、直面している課題への取り組みにおいて、再利用やリサイクルなどの循環設計の原則を採用してきた。私たちの技術は、価値の低い醸造業の醸造粕をアップサイクルすることで、パッケージングのニーズの3分の1を満たせる可能性を秘めている」と指摘する。
将来の革新計画についての詳細を求めると、Alterpacksは、原材料ベースを拡大させ、より多様な包装製品を使用するために、他の形態の農業廃棄物を調査する予定であることを明らかにした。
毎年、何百万トンものプラスチックが海に流出し、自然の海を汚染し、水生生物を脅かしている。 この光景に動揺した熱心なスキューバダイバーの Prakruti Kodaliは、Dinaz Zenobia TamboliとpFIBREを共同設立し、植物由来の成分から作られた100%海洋生物分解性の包装フィルムを開発した。
望ましい特性と保存可能期間を備えた原材料の特定から、生分解性包装フィルムの環境への安全性の保証まで、pFIBREは革新プロセス中に多くのハードルを克服しなければならなかった。試行錯誤の末、pFIBREは最終的に暗号を解き、海洋生物に有害な物質を放出することなく自然条件で完全に分解できる包装フィルムを設計した。
Kodali氏は「私たちの包装フィルムは、今日の市場で二酸化炭素(CO2)排出量がほぼゼロであり、同様の特性を持つ他の代替品と比較してわずかなコストで済む唯一の製品である。私たちは今後数か月で、排出するよりも多くの炭素を大気から除去するカーボンネガティブになるよう努めている」と語る。
pFIBREは、今日のさまざまな包装フィルムで革新を続け、遮断性を改善するコーティングでフィルムの保存可能期間を延ばしている。pFIBREは食品用包装フィルムにも注目しており、それにより、インスタントラーメンなどの一般的な食品のプラスチック包装を大幅に削減できる可能性がある。
Aegis Packaging、Alterpacks、pFIBREなどの包装産業の革新的な企業は、消費者、研究機関、業界と協力して、より持続可能な未来のためにプラスチックへの依存を減らす上で重要な役割を果たしている。