【AsianScientist】オープンサイエンス・コミュニケーションで信頼を解き放つ シンガポール

今年初めにシンガポールで開催されたグローバル・ヤング・サイエンティスト・サミット(Global Young Scientists Summit:GYSS)で、3人の著名なパネリストが若い研究者に対し、正直に情熱的に心を開いてコミュニケーションをとるよう働きかけた。(2023年4月25日公開)

Bloombergの最近のレポートによると、この2年間で史上最も広範かつ迅速にワクチン接種が開始され、2022年10月5日の時点で、世界中で127 億回 以上の接種が行われた。とはいえ、多くの人が躊躇し続けており、それには不信感や誤った情報が蔓延していることが根底にあることは明らかである。

英オックスフォード大学ハートフォードカレッジの生化学特別研究員であるAlison Woollard准教授によると、このような一筋縄ではいかない状況に取り組むために、科学コミュニケーターはまず聞き手とその既存の信念の背景を理解することによって、信頼を築かなければならないとの見解を示した。

同准教授に加え、ミレニアム技術賞受賞者であるDavid Klenerman氏とシンガポール国立大学(NUS)量子技術センターのValerio Scarani教授が、シンガポール国立研究財団が主催するグローバル・ヤング・サイエンティスト・サミット(GYSS) のパネルディスカッションに参加した。国立図書館庁の図書館長兼チーフ イノベーション オフィサーであるGene Tan氏が司会を務めた。2013 年に発足した GYSS は、世界中の若い研究者をシンガポールに招待し、科学と技術のトレンドについて話し合い、さまざまな分野のトップ科学者の意見を聞くものである。

パネリストは経験を共有しながら、聞き手を知り、適切にコミュニケーションをとることについて助言することに重点を置いていた。たとえば、Scarani教授は現在、NUS で The World of Quantum(量子の世界) と呼ばれるクラスで講義している。ユニークなことに、このクラスは文系と理系の両方の学生を歓迎しており、データ科学者から中国を研究する学生まで、好奇心旺盛な若者でいっぱいのクラスになっている。

「私が促進しようとしているメッセージは、複雑な数学、シュレーディンガー方程式や波動、あるいは、理解するには物理学がの知識が少し必要な黒体放射のようなものでさえも書き留めることなく、魅力と難しさ、そして概念的な興味を直接引き起こさせる方法で量子力学を示せる方法があるということです」とScarani教授は話す。

市民参画と教育は別として、研究者が助成金申請のために自分の研究を効果的に伝えることができることも重要である。助成金委員会は、さまざまな分野の専門家で構成されており、科学者は自分の研究の核心と、助成金を受けるための重要性を説明できなければならない。

David氏は、研究者は自分の分野以外の聞き手に対して細部を「簡単に話す」のではなく、「その研究 の本質を抽出する」ことに重点を置くべきだと助言し、「私たちは細部に気を配ることに多くの時間を費やしていると思います。時には空から自分が何をしているか見るのも良いことです」と述べた。

研究プロジェクトの本質と価値を伝えることは、科学者が自分の研究によって直接影響を受ける集団と話すときに特に重要になる。たとえば、David氏は神経変性疾患に焦点を当てた研究者として、カンファレンスでアルツハイマー病やパーキンソン病などの患者に話すことは特に難しいと感じているという。David氏は「これはとても個人的なことです。 突然、目の前に、自分が研究している病気の患者がいます。自分の研究を発表したいのですが、人々に誤った希望を与えたくないし、悲観的にもなりすぎたくないのです」と自らの経験を話した。

パネリストらはまた、参加者に対して他の研究者と率直に意見を交換することも勧めた。科学者の中には進行中の研究を共有することをためらう人もいるかもしれないが、Woollard准教授と Scarani教授は若い科学者に悪用や競争を恐れずに信頼するよう促した。

Woollard准教授は「ほとんどの場合、有利な点が不利な点を上回ると思います。このような集まりでは、あなたのところにやって来て、『あなたの研究に本当に興味があり、私たちの研究と合っているので、協力できるかもしれない』と言ってくれる人を見つけられる可能性が高くなります。 そこで本当に重要な発見が起きるのです」と話した。