【AsianScientist】10分の昼寝でも集中力向上―シンガポールで調査

シンガポールでの調査から、午後の昼寝をするならば最適な時間は 30分間であるが、10 分でも注意力と気分を高めるのに役立つことが分かった。(2023年5月11日公開)

世界には、昔から午後の昼寝を習慣とする文化がいくつもある。昼寝をすることで昼食後のエネルギー低下を防ぎ、脳の柔軟性が向上して変化する状況に素早く適応できるようになる。新しく行われた調査から、昼寝により認知能力も向上できることが分かってきた。

シンガポール国立大学 (NUS) の科学者らは、午後の昼寝が気分、注意力、および心理的行動にどのように影響するかを調査した。この調査はSleep誌 に掲載された。以前の調査では、就寝前に学習したことは長く記憶にとどめることができると分かったが、NUSでは今回、午後の昼寝後の学習効果を調べた。

研究者たちが昼寝をする人としない人を比べたところ、昼寝をする人のほうがその後に新しい情報を吸収し、保持する能力が高まることが分かった。また、注意力が向上し、意識ははっきりし、心理状態はよいものであった。しかし、その効果を得るためにどれくらい昼寝をすればよいのだろうか?

NUSのポスドク研究員であり、この論文の共著者の 1 人であるルース・レオン (Ruth Leong) 氏は、Asian Scientist Magazine誌 とのインタビューで、時間がどの程度のものであれ、昼寝をしないよりするほうがいいことを強調した。「10分間の短い昼寝であっても、主観的に注意力が増加し、気分は前向きになることを示しています」

チームはこの調査のために、一晩に6時間以上眠る若い成人を募集し、参加してもらったた。観察中の昼寝の質が影響を受けないようにするために、参加者に対し、昼寝の前には薬、激しい運動、またはニコチンやカフェインなどの刺激物を控えるよう頼んだ。

参加者たちは日を変えて10分間、30分間、60分間の昼寝をした。睡眠パターンを捉える高度な検査である睡眠ポリグラフを使用して測定値から眠りにつくまでの時間を排除し、昼寝を正確に測定した。昼寝から目覚めた後、参加者たちは一連の簡単なタスクを実行するよう求められた。

たとえば、あるタスクでは一連の画像を見せて、しばらくしてから画像を説明するよう求められた。これは、昼寝が新しい記憶の生成に与える影響について調べることを目的としていた。30分間の昼寝をした参加者は、これよりも短い、または長い昼寝をした参加者やまったく昼寝をしなかった参加者よりもよい成績を出した。チームはまた、長時間の昼寝によるパフォーマンスの低下の原因として、睡眠慣性(起床直後の重い感覚と見当識障害)を除外した。

参加者たちに一般的に見られたのは注意力の向上であった。参加者たちの注意力は1~4時間、高かった。また、昼寝をした者は、しなかった者よりも気分のよさを報告した。10分間または30分間の昼寝をした参加者は、持続的な注意が必要なタスクの実行もうまくできた。

昼寝を予定に組み込むならば、30分とするとよい。パフォーマンス向上のメリットがあり、現実的でもあるので最適なバランスとなる。ただし、眠りにつくまでの時間を考慮すべきである。一般的に、人は眠りにつくまで10分間を必要とするので、30分間の昼寝をする場合は、少なくとも40分間はデスクから離れることを論文は勧めている。

当然のことながら、多くの人は職場で昼寝をするために30分取ることはできず、そのための専用スペースもない。レオン氏と彼女の共著者であるマイケル・チー (Michael Chee) 氏は、Psyche誌に掲載された昼寝をする方法の中で、椅子で昼寝をしたり、眠らずに目を閉じたりするだけでも、エネルギーと気分を回復できると述べている。

日常的に昼寝をしている人々は、この調査が明らかにした昼寝の認知的メリットをさらに顕著に享受しているかもしれない。毎日昼寝をすると昼寝後のこれらの利点が長く継続するのか確認するには、さらに調査を進める必要がある。

レオン氏は調査の次のステップについて次のように語った。「昼寝に関する大規模な調査、 そして、これらのメリットが異なる生活習慣、睡眠時間、職業の人々にどのように当てはまるのか調査をすれば、興味深いことになるでしょう」

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