2023年7月21日
マレーシア・ハイテク産官機構 (Malaysian Industry-Government Group for High Technology:MIGHT)からの寄稿を以下に紹介する。
ホライズンスキャニングとは、新たなトレンドの初期の兆候や重要な発展の指標を発見するための技術である。変わらぬものと変わるものを見極めるために、この手法は新しいもの、変化するもの、終了するものについて調べる。ホライズンスキャニングでは、斬新かつ予期せぬテーマ、繰り返される問題やトレンド、現在の思考の交差点で適合する物事の進化の性質について探求する。
ホライズンスキャニングを実行するにあたり、シグナルのスキャニングおよび分析というものがある。これらは通常、社会、テクノロジー、環境、経済、政治(S.T.E.E.P)という5つの観点から検討される。マレーシア・ハイテク産官機構 (MIGHT)がシグナルのスキャニングを行う場合、具体的には、調査を行い、関連するステークホルダー(政府、業界、一般大衆等)との一連の関わりを通じて、情報を特定し統合することが含まれる。
潜在的なシグナルが大勢の人々に広く知られる前に調査するために、実行には体系的な方法が設定されている。この基準に基づけば、取るべき行動や対応について先行的な計画を立てることができる。暗示となりそうなシグナルを調査することで、たとえば 2030 年までの数年間に、シグナルが政府、業界、社会などの関係者に与えるであろう質的な影響を理解できるようになる。
その後、影響と暗示がさまざまな利用可能な計画、目標、希望と合うものであるか(または合わないものであるか)を、さまざまなレベルで調べることができる。たとえば、「持続可能な開発目標2030 」(SDG 2030) を最高レベルで議論し、そして国、組織、または個人レベルにまで波及させることができる。
シグナルは具体的で説得力のある観測内容であり、それを通して現在の世界を形成している変化を観察し、分析することができる。最終的に、シグナルは今日発見できる未来のエビデンスを提供する。正当なシグナルは、行動の変化、産業の転換と破壊という形で反応を引き起こすかもしれない。従って、シグナルは、新しい予期せぬ経験、行動、価値観という点で、未来の方向性を鮮明に描写する「ハッ」とする瞬間をランダムに生み出すことがある。
シグナルは様々な形をとって現れることがある。
シグナルは、本来ならば不確実な未来について広範囲かつ創造的に考えるのに役立ち、以下により意図しない結果を予測できる可能性を持つ。
シグナルはさまざまな形で見いだされる。シグナルが提供するものは情報、および今後の課題や暗示に関する早期警告である。S.T.E.E.Pの視点を組み合わせてシグナルを検討すると、結果として複雑な問題をより包括的かつ体系的に理解することができるかもしれない。厳密な評価を経て、事実に基づく多くの仮定が明らかになるにつれて、黄鉄鉱と本物の金塊を選別することができる。それが重要なシグナルである。
このようにすれば、強力な戦略や対策を考案することが容易になり、新たな機会や課題を活用できる。最終的には、あるテーマにとって重要なシグナルを特定することで、将来の可能性、蓋然性、望ましい展開それぞれについて世界観と洞察が得られ、自信と回復力を身に着けて迫りくる不確実性を乗り切ることができる。
それぞれのシグナルは政府、産業界、社会に関する数字やこれらに与える影響に関する情報を提供するため、シグナルは変化し続ける世界の状況に関する洞察を与えてくれ、重要な役割を果たす。これは、会話を開始し、読者に対して考えられる未来を模索しながら体系的な方法で考え、行動してもらうことを目的としている。信頼できる情報源からシグナルを収集して分析することで、個人や組織は将来を予測することができ、リスクと機会を評価し計算して、新たなトレンドを深く理解することができる。しかし、未来は直線的に進むわけではない。
シグナルの選別と分析は、現状を理解し、それを未来に結び付けるための単なるステップにすぎない。未来は不確実性に満ちている。しかし重要なシグナルは方向性を示し、私たちが大きな自信と回復力を持って不確実な未来を乗り切るのに役立つだろう。
下の表は、政府、産業界、社会など各ステークホルダーが考えられる影響と暗示を予測するために使用することができる。中心部分は、重要なシグナルを表す。階層化された円は、未来の特定の期間またはタイムラインを表す。未来に向けて、シグナルはステークホルダーの関係分野に基づいて、考えられる暗示を示すことがある。
シグナルまたはシグナルの組み合わせが未来の利害関係者にどのような影響を与えるかを理解する
シグナルを使用して現在と未来を接続する全体像を把握することで、包括的かつ体系的な複雑な問題を理解し、発生する課題と機会に積極的に対応するための対策と行動を確実に策定できるようになる。フォーサイト(未来洞察)の場合、シグナルのスキャニングと分析は独立した過程ではない。これらは、ホライズンスキャニングというより大きな手法の中での接続部分である。これらは継続的かつ客観的な調査であり、現在起こっていること、そして将来起こることについてモニタリングを行う。
シグナルは現在と未来を繋ぐ。本稿の主な目的は、シグナルのスキャニングを通じて読者のフォーサイトの意識を高めることである。シグナルは、現在観察できる未来のエビデンスを提供する。したがって、正当なシグナルは、行動の変化、産業の転換と破壊、政府の対応と政策の策定という形で反応を引き起こす可能性があるため、シグナルを軽視すべきではない。
周囲を見回し、周囲のものを観察するときは、次のように自分自身に問いかけてみてほしい。―それらは自身の未来にどのような影響を与えるか?
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