スピード感もって中小企業のアイデアを製品に―シンガポールのSIMTech Innovation Factory

2023年8月25日 JSTシンガポール事務所 馮偉誠(Max Fong)

施設を紹介してくれたSIMTech Innovation Factoryのディレクター

SIMTech Innovation Factory (IF) は、自分の製品を作りたいという中小企業のために製品開発のサポートをしているイニシアチブである。今回、この施設を取材する機会を得た。どのようにサポートしているか、その秘訣を探った。

IFは、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR) と、シンガポール企業の発展と海外進出を促す政府機関であるEnterprise Singaporeの支援によって運営されている。2020年末から始まった当初、このイニシアチブは廊下のスペースで運営されていたが、わずか2年間で40社以上の地元企業とコラボレーションできたこともあり、現在は7種類の専門ラボも備えているもっと大きな施設になっている。

IFのチームは、製品開発における必要な知識と豊富な経験を持っているデザイナーや科学者、エンジニアなどで構成されている。IFの施設に入ると、すぐに革新的なテクノロジーや様々な製品のショーケースに囲まれているように感じる。電動バイクの充電技術や自動のスムージーマシン、環境に優しい食べられる食器など、IFと共同で開発された幅広い製品の数々が見られる。

電動バイクの充電技術のショーケース

IFには、デザインや製造プロセス、材料科学、ロボティクス、自動化、サステナビリティなどを中心とした様々な専門ラボがある。IFは学際的なチームがいることと、A*STARの500人以上の研究者からのサポートがあるからこそ、アイデアから製品になるまでの過程を全面的にサポートできるワンストップのソリューションとなっている。

中小企業は自分の新しい製品を作りたい時は、製品のアイデアさえ持っていればIFに相談することができる。そうすれば、IFはアイデアを実現できるかどうかを評価するだけでなく、アイデアを改善するためのブレストもできる。他方で、具体的なアイデアとデザインを持っている、ほぼ製品化できている段階の企業であっても、IFの協力を求めることができる。そのような企業のために、IFは研究者や技術へのアクセスや製品の改善方法、他の企業とのパートナーシップの検討などを提供し、最後の段階もスムーズに行けるようにサポートする。

Smooderの自動スムージーマシンのショーケース
(撮影:馮偉誠)

Smooder(スムーダー)

「Smooder」というスムージーの地元企業はIFがサポートした多くの企業のうちの1つである。エネルギードリンクやソーダのような糖質の多い飲料の普及に対し、Smooderの創業者は新鮮な果物や野菜を使用した健康にいいスムージーを便利に提供できる自動スムージーマシンというアイデアを考えた。IFを訪れた時はそのアイデアを伝えるためのたった1枚の手書きの図しかなかったが、IFは自動スムージーマシンの可能性を見極め、共同開発することとなった。

SmooderはIFの学際的なチームの協力の下で機能的なプロトタイプを作るには1年もかからなかった。できた自動スムージーマシンは、瞬間冷凍で新鮮さを保ったフルーツと野菜が入っているコップを自動スムージーマシンに置けば、45秒でスムージーを作ることができ、しかも自動洗浄の機能も備えているので、便利で使い方がとても簡単である。現在、Smooderは自動スムージーマシンのスムージーを販売する店舗も開店し、様々な会社でもパントリーエリアなどで自動スムージーマシンが使用されているが、短期間でここまで成長できたのはIFのチームのおかげだと言えるだろう。

このようなIFの取り組みは日本で言えば産業技術総合研究所あるいは各都道府県の公設試験研究機関に類似していると言えるかも知れないが、アイデア出しからプロトタイプ製作、そしてマーケットに送り出すまでのスピード感にはシンガポールならではのものがあると思われる。

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