シンガポールのトップ科学者2氏と新鋭科学者3氏に、同国の科学、技術、経済に貢献したとして、2023年シンガポール大統領科学技術賞が授与された。(2023年12月5日公開)
シンガポールは、2023年大統領科学技術賞(PSTA)の各賞を2人の科学者に授与した。受賞者は、シンガポールの科学技術エコシステムにおけるリーダーシップと貢献が認められた。受賞者は2023年10月20日、シンガポールのターマン・シャンムガラトナム (Tharman Shanmugaratnam) 大統領から賞を受けた。
PSTA は、シンガポールの科学者とエンジニアにとって国内最高の栄誉である。この賞は 1987 年に国家科学技術賞として創設され、現在は大統領科学技術賞 (PSTM)、大統領科学賞 (PSA)、大統領技術賞 (PTA) という3 つの賞から構成されている。今年、シャンムガラトナム大統領はPSTMとPSAのプレゼンター役を務めた。
PSTM を受賞したのはシンガポールの科学技術エコシステムのパイオニアであるクエック・ギム・ピュー (Quek Gim Pew) 氏である。彼は、シンガポールのリサーチ・イノベーション・企業 (RIE) 分野の形成で顕著な貢献を行ったことが評価された。
クエック氏はそのキャリアの中でシンガポールの宇宙技術、量子工学、人工知能 (AI)、および高性能コンピューティングの能力を開発してきた。彼は STEM 関連の取り組みの推進者でもあり、次世代の科学者やエンジニアの育成に専念してきた。クエック氏は、協働の提唱者でもある。国内外機関の協力関係を促進し、機関同士が協働して量子研究に取り組めるよう尽力した。彼の業績により、シンガポールにおける量子研究の進歩は加速し、世界的に認められた量子研究のハブという国の評判が確固たるものになった。クエック氏は現在、シンガポール国防省の上級研究開発コンサルタントであり、さまざまな機関、組織、高等教育機関の委員を務めている。
PSAを受賞したのは、シンガポール国立大学 (NUS) デザイン・エンジニアリング学部の准教授で卓越教授のキウ・チェンウェイ (Qiu Cheng-Wei) 博士である。キウ博士はトポロジカル熱拡散と放射の分野に貢献した。
キウ博士の研究から、熱を封じ込めて放散させるという画期的な技術が切り開かれた。最近、博士の材料科学の研究は大きな進歩を見せている。銀や金よりも熱伝導が高く、電力を一切使用せずに部屋を冷やすことができる材料ができるかもしれない。
この授賞式では、シンガポールの研究界の新鋭科学者3氏が若手科学者賞 (YSA) を受賞した。YSAは、シンガポールで研究開発に積極的に従事する35歳以下の研究者に授与される。この賞を主宰するのはシンガポール国立科学アカデミーであり、シンガポール国立研究財団(NRF)の後援を受けている。
YSAを受賞した3氏のうち、シンガポールの南洋理工大学 (NTU) のチャン・グオキン (Chang Guoqing) 博士は、天然物質が持つ量子の可能性を明らかにしたことが評価された。彼は高度な数学・計算手法を利用して、これらの物質に隠れた量子の挙動を予測し、発見している。
次に生物学・生物医科学部門では、NUS のタン・ヨン・ジー (Tan Yong Zi) 博士が、極低温電子顕微鏡の新技術の先駆者として受賞した。この技術は創薬プロセスを改善することができる。彼の研究は、医学界が医薬品開発で新しい標的を特定するのに利用できる。
そして技術部門では、シンガポール工科デザイン大学 (SUTD)のソウジャンヤ ・ポリア (Soujanya Poria) 博士が、マルチモーダル推論能力を備えた会話型 AI モデルの開発で評価された。ソウジャンヤ博士と彼のチームは、人間のやりとりから得られたテキスト、オーディオ、ビデオデータを組み合わせて、人間の意図と感情を理解できる AI システムを開発した。